第19話 箱根へ
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答えに一応の満足をしたのか、それならいいんだがと含み笑いをする。
その笑い方を以前から嫌っている女性は、意趣返しをする。
「貴方こそ、昔の友人の拾いモノが九鬼財閥で未だに働いているからと言って、迂闊な真似は控えて下さいね?」
「わぁーてるよ。百足の拾い主に迷惑かける気はねぇさ」
「それならいいのですが」
相変わらず気を害さない不本意の相棒に、また若干苛立つ。
「用が済んだなら出て行ってもらえますか?身支度をしているんです」
「ヘイヘイ、言われずとも出ていくさ」
百足は、追い出されるようにドアを閉めて廊下に出る。
忠告はしたが、全然剣呑な雰囲気を乱さない相棒の女性に1人嘆息する。
「久宇舞弥、何時か遣らかしそうだなぁ」
百足は1人呟いた。
自分が知る限りの“女”と言う生き物は、何時だって意固地だ。
その上でさらに、自分が今まで知りあってきた裏の世界を生きる女は特にそうだった。
「勿論、李静初の奴もだ」
自分が嘗て所属していた外道専門の暗殺組織。
そこで蛇と呼ばれていた仲間が拾った子供、様々な騒動を経て龍と名乗る様になった彼女は今、九鬼財閥で働いている。
「出来れば自分で気づいて欲しいもんだぁ。俺達ドブさらいが光当たる所で生き方を変えようと幾らもがこうと、その果てにあるのは絶望だけなんだぁ」
百足の知り合いにも男女問わず何人か、ドブさらいから光当たる道へ行き方を変えようとした者達が居たが、悉く全員絶望に行き当たった。
ある者は自殺をし、ある者は自殺の聖地たる山に入ってそのまま行方知れず、そしてある者は殺される覚悟で自分を絶望に追い落とした者達に復讐しようとして、文字通り玉砕した。
「李の奴が例え九鬼財閥で働いていようと関係ない。遅かれ早かれ、いずれ絶望に追いつかれちまう。そうなるくらいなら不格好に生きて行った方がまだマシだぁ」
結末を知る者だからこそ、絶望よりマシな生き方を提案したい。
ただそう願うしかなかった。
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