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雲は遠くて
108章 信也、吉本隆明の芸術言語論について講演する
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います。あっははは」

 信也が笑うと、会場からも、笑い声が()がる。

「糸井重里さんって、思いやりのあるかたですよね。
この183もの講演は、聞くだけではなく、テキストを読むこともできます。
ダウンロードもできますから、パソコンでゆっくりと読むこともできるです。
吉本隆明さんの考えとかを知りたい人は、ぜひ、ご利用ください!
さて、吉本さんの芸術言語論のことなのですが、
おれは、この芸術言語論こそが、もしも、完成されたのならば、
世界の人々に、平和や幸福や繁栄や希望をもたらすだろう、
ノーベル平和賞級の仕事になっただろうと、想像してしまうのです。
なぜならば、吉本さんの芸術言語論こそが、もしも、完成されたのならば、おそらく、
≪芸術こそが、世界の人々にとって、楽しく幸福で平和な人生を実現に(みちび)く、
(みなもと)根幹(こんかん)だ≫と言うことを証明する普遍的な理論書になるだろうと、
おれなんかは、予想するからです。
おれたちが、一生懸命に考えれば、芸術言語論の全貌も、想像できると思うんです」

「さて、みなさんは、何が理由で、こんなに、人の心も荒廃しているような、
殺伐(さつばつ)とした事件ばかりが多い、
明るい未来も(えが)けない世の中になってしまっていると思いますか?
その理由を、おれは、芸術というものが、軽視され過ぎいていることに、
大きな原因があると考えています。
吉本さんは、そんな衰退している芸術の復活を願っていたのだと思うのです」

「さて、では、芸術とは何か?ということが問題にもなります。
吉本さんは、芸術言語論で、こう言っています。
≪ぼくが芸術言語論ということで、第一に考えたことは、言語の本当の幹と根になるものは、
沈黙なんだということです。
コミュニケーションとしての言語は、植物にたとえますと、
樹木の枝のところに花が咲いたり実をつけたり、葉をつけたりして、季節ごとに変わったり、
落っこちてしまったりするもので、言語の本当に重要なところではないというのが、
僕の芸術言語論の大きな主張です。
沈黙に近い言語、自分が自分に対して問いかけたりする言葉を、ぼくは『自己表出』といっています。
そして、コミュニケーション用に、もっぱら花を咲かせ、葉っぱを風に吹かせる、
そういう部分を『指示表出』と名づけました。
言語は、そのふたつに分けることができますよ、
ということが、芸術言語論の特色として強調しておきたいことです。≫・・・と。
つまり、芸術活動の価値や根幹(こんかん)には、『自己表出』が大切だと言っているわけですよね。
ですから、芸術とは、『自己表出』と『指示表出』とが、
()りなす絹織物(きぬりもの)ような、その衣服のようなもので、
そんな価
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