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雲は遠くて
108章 信也、吉本隆明の芸術言語論について講演する
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す。
そんな、たぶん、おれの独断と偏見の吉本論ですが、聞いてください。あっははは」

 信也はそう言って、ちょっと頭をかいた。

「吉本隆明さんは、脳科学者の茂木健一郎さんとの対談の本、
『すべてを引き受けるという思想』の中で、こんなことをおっしゃっています。
・・・『約まり(つづまり)』の仕事として、行きついたところの仕上げとして今からやりたいことは、
集大成としての『芸術言語論』となります。・・・と。」

 信也はそう言うと、みんなをゆっくりとしばらく見渡して、ひと呼吸おく。

「吉本さんの代表作は、『共同幻想論』や『言語にとって美とはなにか』や、
『心的現象論序説』や『最後の親鸞』や『アフリカ的段階について』などがあります。
あと、『カール・マルクス』や『吉本隆明詩集』とかもあります」

 信也のいる演題の左には、幅2メートルの大型ディスプレイがあって、
吉本さんの代表作の本の数々が映し出される。

「吉本さんのこれらの著作は、おれは、天才的な、世界に通用する思想家の仕事だと、
思っているんですけど、正直に言って、おれの頭では、なかなか理解が(むずか)しいです。
あっははは。でも、『ロッキング・オン』の渋谷陽一さんも難しいって言ってます。あっははは」

「渋谷陽一さんは、『吉本隆明・自著を語る』の最後のほうで、こう言っています。
・・・『共同幻想論』や『言語にとって美とはなにか』や『心的現象論序説』において考えられていた、
『社会って何だろう』『言語って何だろう』『心って何だろう』という基本的な疑問を、
有機的に組み合わせながら(ひもと)いていくという、
今そういう状況になってらしゃるっていうのは、すごく幸福なことですよね。・・・と。
この渋谷さんの言葉に対して、吉本さんは、
・・・ええ、(われ)ながら、自分と自分の問答(もんどう)みたいなところでは、
相当(そうとう)幸福なのかもしれません(笑)。・・・
と言っています。この本は、2005年5月頃の対談だったようです。
吉本さんが亡くなる、7年前あたりですよね」

「さて、おれが、みなさんに、お話ししたい、吉本さんの芸術言語論なのですが、
なんと、それについて書かれた決定版のような本格的な著作は、どうも存在しないようなのです。
このことは、吉本さんにとっても、大変に心残りだったろうと思います。
まあ、でも、(さいわ)いなことに、ネットでは、コピーライターとしても有名な、
糸井重里(いといしげさと)が、『ほぼ日刊イトイ新聞』のHPで、2015年1月9日からですが、
『いつでも自由に、何度でも、お聞きください。』って、
吉本隆明さんの講演音声の無料公開をしているんですよね。
さすが、糸井重里さんって、おれは感謝してい
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