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大刃少女と禍風の槍
十四節:上を目指す理由
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やりたいってのも、まぁあるけどよ……ホントの一番は、ジッちゃんとバアちゃんの為なんだ」
「……それは、何故だいや?」


 グザは敢えて、此処で『何故父や母 兄弟姉妹のじゃないのか?』とは聞かなかった。
 否―――最初に祖父母が出てきた時点で、家族構成がどうなっているかなど、もう考えるまでもない。
 離婚や生活環境の急激な変貌もあるが、最悪の場合はおそらく…………。

 ソレが分かっているから、口を出さなかったのだ。


「実は、さ? SAOサービス開始初日が……オレの誕生日だったんだよ」


 先程とは打って変わって、哀しげな雰囲気を滲ませながらチヨメは語り出す。


「オレのジッちゃんは凄くてさ、年取ってんのに筋肉あって武術やってて、超元気なんだ。でもその分働いてるから、色々用事があってオレの誕生日を碌に祝えた日が少ないってのを気にしてたみたいで……」


 そして今年のチヨメの誕生日は運良く仕事休みの日であり、しかもSAOサービス開始と重なっていた。
 そういう事もあって、今までの分を全てぶつけて祝ってやると言われ、溜めていたお小遣いや落し玉を吐き出してナーヴギアとソフトを買って貰う事になったらしい。

 不摂生な体型の男性達や、線の細く色白なゲーマー達に混ざり……褐色に焼けた肌を持つマッチョな老人が混ざる様子は何だか可笑しくて、チヨメは一列に並んだ者等を見て思わず笑ってしまったのだとか。


「ゲーマーたちの情熱って凄くって、もう長蛇の列だったんだぜ? で、残り五本てとこで漸く買えたんだ! ……その時はジッちゃん滅茶喜んでて……オレもすっげぇ嬉しかった」


 この祖父にしてこの娘有りと言うべきか二人は走って帰ると、早速ナーヴギアをネット機器に繋ぎ、サービス開始の時を今か今かと、チヨメと彼女の祖父、そして祖母は待っていた。
 今晩の御祝いの事、御馳走の事、呼んでくれる既知の友人の事……SAOでのこれからの事も。

 そして、いよいよSAOサービス開始の時間となり……………チヨメの大好物を一杯作って待っているから友達と冒険してきなさいねと優しく笑う祖母と、現実の武術が役に立つのか楽しみだと豪快に笑う祖父の姿を見ながら、嬉々とした表情で『リンクスタート』を口にする。

 ―――――その二人の特徴的で、しかし心に染みわたる思いやりの笑顔が……もしかしたら最後の光景になるかもしれない、絶望的な状況に陥るとも露知らずに。


 ……其処で一旦言葉を切り、大きく溜息を吐き出して、チヨメは哀しげに続けた。


「多分さ? ジッちゃん、後悔してると思うんだ」
「後悔か……それは、何故だい」
「……『今まで余り出来なかった分、今年はパーッと祝ったる!』って言ってたし、ナーヴギアとソード
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