十三節:更に出会うは黒髪の少女
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っと罅を入れてやるべく岩に拳を叩きつけ始めた。
黙々と苦行を自ら繰り返す、派手さの “は” の字も無い地味な作業は続き、キリトとグザが岩割りに挑戦すること……一日と十数時間。
―――少しマケて言うのならば、二日間ほど経った頃。
「…………やっぱり……やっぱりあり得ないって……」
キリトがそう声を洩らしたのも無理はない。
もうほぼ全体に大きな亀裂が走り、傍目から見ても十分割れ掛けなのだと認識できる程、グザの岩割りは進展している。
じゃあキリトはどうかというと…………漸く三分の二を多少通り越せたか、越せないかといった中途半端の罅割れ具合。
武器がない事とクエストの仕様もあるのだろうが、それにしたって現実での鍛錬と経験が此処まで差を広げるとは、キリトは仕組みが分かろうとも全くもって納得いかなかった。
真っ芯を捉える確率も格段に上がり、段々と様になって来た体術を持って岩を叩いているのだから、余計にそう思うのかもしれない。
もしくは……ヒゲを書かれた恨みと、攻略に戻りたい思いが募り、ただ焦っているだけかもしれないが。
―――兎も角、複雑な感情を胸の内に湧かせながら、岩と向き合い二重の意味で格闘する事―――――更に数十分。
「さーてさて……もう良いかね?」
隣でしこたま響いていた打撃の重低音が、グザのそんな呑気な呟きと共に止んだ。
岩の広がる罅割れはより深くなっているが、しかし今にも割れそうな状況が続いているだけである。
……にも拘らず、彼は何故行き成り岩叩きを止めたのか。
「シッ! ハッ……!」
暫し岩を見つめ、両手を合わせ折って指を鳴らし、首に手を当てて回し―――――ゆっくりと右脚を掲げる。
珍しく奇声を上げずに攻撃し始め、相変わらず威力を最大限確保した一撃で真っ芯を的確に捕えて、また徐々に亀裂を走らせていく。
だが……コレでは今までと何ら変わらず、何故先程いきなりストップしたのか理解できず、説明にもなっていない。
格闘の手を止めグザの方を見るキリトにも、ソコまで付き合いが長くない事やヘラヘラ飄々としたグザの性格もあり、やはり彼の真意は分からない。
「ハハハハハ……キヒャハハハァ!!」
見詰める内にラッシュはやがて速く重くなり、奇声すら彼の口へ戻ってくる。
やがて岩の内部より微かに響く、奇妙に甲高い音が合図となり―――右足裏で強く蹴り付けた。
「ッ……ハァ!!」
すぐ身体を捻って岩を蹴りつつ真上に跳ぶ。
更に空中で数回転し、右膝を深く曲げて、左脚を伸ばして固定。
その格好のまま落下。
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