十三節:更に出会うは黒髪の少女
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そうな、砲弾染みた爆音。
ぶつかった際の音も重厚的で兎に角鋭く、より強く響くサウンド。
多少ながら離れているにも拘らず、それらはキリトの耳へしっかりと届いて来る。
『百聞は一見に如かず』とはよく言ったもの……キリトはグザが何故 “同じじゃない” と言ったのか、一辺の疑問も無く理解出来ていた。
今までは自分の岩を割る事に集中していた為、そして “おヒゲ” を一刻も早く消したい衝動に駆られていた為、今までは碌に認識出来ていなかったのだろう。
「……良く分かったよ。そりゃこんだけ違えば差は出てくるよなぁ……しかもアンタ右利きだろ?」
「まぁ、その通りやね」
利き手で無いのにキリトよりも優れた音を出したのだと分かり、キリトの額にはその据え恐ろしさからか冷や汗が流れている。
同時に……ゲームばかりして閉じ籠もっていた痩身色白の人間と、恐らく外で武術の鍛錬を積んできたであろう細マッチョ色黒な人間とでは、プレイヤースキルでここまで差が出てくるのかと悔しく思ってもいた。
(いや当たり前か。指動かすのと身体動かすのじゃ、脳にしみ込んでく動作や経験が違い過ぎるしな……)
余裕の表れなのかブルーベリー色のパイプを咥えたグザは、もう既に真剣な表情をさっぱり捨て去ってヘラヘラ笑っている。
彼の疑問に答え終えたからか自分の岩に再度向き合い―――その途中、軽く叩きながら声を掛けてくる。
「そうだそうだ……坊主、お前さんは力み過ぎだ。拳打ち込む際に体重を乗せて、拳をより強く握り込む感じでやってみな? 盾持った事あるなら、防御する際の感触を参考にした方が良いやね」
「……防御の……」
「あぁ、後腰もちゃんと捻って、身体と連動させな。少しはマシに成るだろうよ」
そうアドバイスを残し、三拍置いてから拳と蹴りとを組み合わせて、三度岩に亀裂を入れようと奮闘し始めた。
キリトは暫しの間黙っていたが、ゆっくりと目線を落として自分の掌を見やり、グザの言葉を脳内で反芻しながら何度も握って開いてを繰り返す。
言葉を整理し、頭の中でイメージトレーニングし、虚空へ向けて数度拳を放ってから…………岩に向かい、グザからの助言を取り入れ拳を叩きつけてみる。
結果……手に伝わる硬度は何時も通りだがしかし、ガツゥン!! と岩より響く高らかなサウンドが、今までと威力のケタが違うと言う事を教えてくれていた。
“岡目八目” という言葉もあるし、出来るだけ強く拳を放とうとしてその実、逆の結果を呼び寄せているのが横から見ていたグザからハッキリと認識出来たのだろう。
「……サンキュ」
顔に少しばかりの笑みを浮かべたキリトはグザの方を見やって、小さくそう声を漏らすと、も
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