十三節:更に出会うは黒髪の少女
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返すか、第一層主街区『始まりの街』に籠っている方がよほど利口だと言える。
……にも拘わらず、彼等の目の前を通り過ぎて行った黒髪少女は積極的に戦いに参加しており、しかも大声で発していた独り言の内容から察するに、今の今まで略々 “一人で” 闘っていたのだろう。
何故、死の危険があるフィールドに一人で赴くのか。
何故、脅える事無くモンスターに立ち向かえるのか。
道へ疎らに散らばる彼らには、彼女のそれが酷く理解できなかった。
そんな彼等に目をくれる事も無く、少女は顔に覚悟に色を濃く浮かべて、転移門広場から走って居た際の勢いを全く殺さず《転移門》へと跳び込んだ。
そして転移した、第二層主街区の店やで準備を整え、フィールドに意気揚々と降り立ち―――
「ブモ゛ォオオオオォォオオォォォォオゥ!!」
「うおおおおぉぉぉおおぉぉお!?」
何時ぞやのデジャブか、またも猛牛に追われていた。
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…………とある少女が盛大にやらかしていた時刻より、約二日前。
エクストラスキルと呼ばれる、初期から存在しているモノとは違い、特殊条件下で発生する新たなスキル―――――その一種である【体術】を伝授してくれるNPC師範の元で、昨夜からずっとグザとキリトは素手で岩と向き合っていた。
尤も、同じなのはその試練と大まかな状況だけであり、罅の入り具合には文字通り “天と地” の差がある。
グザはもう既に三分の二近くまで広がっているのに対し、キリトは三分の一辺りに行くか行かないか……といった所なのだから。
修業、もといクエストを始めたのはほんの数分違いである筈なのに、罅の入り方には理不尽なまでの差がついている。
その事に、キリトは納得いかないか唇を尖らせたり、多少老けた様な顔ななったりを繰り返している。
セルフ百面相しながらキリトが肩を落としていると―――何の用事か、不意にグザはキリトの方へ目線を傾けた。
「ブフォッ!!」
と、同時に噴き出した。
……これは別段馬鹿にしたり悪意あっての行動ではなく、単に “キリエモン” と化したキリトの顔が可笑し過ぎて、とても笑いを堪えられないだけである。
タダでさえ羽子板の罰ゲームか何かと見紛う、実に下手糞なぶっとい髭が書かれていると言うのに、ソコへ意図しない変顔まで加えれば、幾ら冷静足りえようともそりゃあ噴き出す。
「ちょ、グザ! 笑うなよ!?」
「クヒ、クヒヒヒハハ…………ッ! あ〜……なら毅然としててくれや。面白ペイントな上に変なツラ下げられたら、コッチも我慢できねーのよ」
「わ、分かった」
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