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大刃少女と禍風の槍
十三節:更に出会うは黒髪の少女
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 少女は納得いかなかった。



 幾ら現実の命が掛っているとは言っても、そしてどれだけリアルな風景が広がっているは言えど……彼女が降り立っている『浮遊城・アインクラッド』を舞台とするソードアート・オンラインは、所謂 “MMORPG" ―――ゲーム世界に他ならない。
 ゲームだからこそ……幾ら見た目が軟弱で有ろうと筋力値を上げに上げれば適正ランクより下の斧など軽々振り回せるし、どれだけ横に広く重そうな体型であろうが敏捷値を集中的に鍛えれば高速を叩きだす事も可能な世界だ。

 よしんばこの世界でプレイヤーの現実的要素が必要になる場面があったとしても、それは現実で剣道や拳法をやっていたお陰で身体を動かすのが上手かったり、体重移動や柔軟など身体操作技術の面で他者の上を行くだけ。
 所謂 “有れば他者よりも優位” なだけなのであって……ざっくばらんに言ってしまえば、ゲーム攻略そのものや大雑把に捉えたゲーム的な強さに、何の影響もない。


 つまり見た目が細くか弱い 『少女』 であっても、歩み方一つでマッチョもかくやな剛腕の 『英雄』 となる事が可能なのだ。



「―――だから “オレ” が女だとか、強さとか攻略には関係ないだろうがよ!?」


 ……その筈なのに、除け者にされた事に、少女は心底納得がいかなかった。


「っのクセになぁ〜にが『女の子だから危ないし、前衛なんか任せるのは不安だし』だ!? 良い人ぶってその実 “戦力外” 扱いしてんじゃないぜ! こんのクソッたれっ!!」


 先に説明したように、このソードアート・オンライン―――SAOはゲームなので見た目の要素などあまり関係が無い。
 本当に問題になる要素を仮に上げるとしても、精々リーチの違いがあったり、体型による動作の違いが出るぐらいだ。


 しかし、残念ながらと言うべきか……文句を大声で垂れつつ、ノッシノッシと大股で歩く黒髪の少女が掛けあった相手は、そのゲームであるという根底を認識しきれていなかった模様で、十分も悩んだ挙句に断って来た。
 愚痴―――という名の大音量の罵声から察するに、チームを組もうと打診した相手に、今口にした言葉を交えて丁重に断られたのだろう。

 少女の腰に下がっているのは、先が二股に分かれた刀身の細い片手曲剣―――曲刀カテゴリに属する武器であり、片手で扱う武器の例にもれずショートレンジが適性距離となる武器。
 それに幾ら最下層とはいえゲーム開始から二ヶ月以上も経った昨今では、デスゲームなのも相俟って鍛え直しはリスクが高く……中々スキルを変える訳にも行かない。
 即ち彼女がパーティーに入るとして、チーム内で一番力を発揮させられる配置を宛がうのならば、必然的に前衛しかない訳だ。

 ……が、
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