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10部分:第十章
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んでおくか」
「悪いね」
「いや、いい」
 これもいつも通りだった。元の本田だった。
「これで二日酔いを消せるからな」
「ああ、コーヒーだね」
「二日酔いにはこれが一番だ」
 実は彼はいつもこうして二日酔いを凌いでいるのだ。その破天荒な生き方を支える重要な要素の一つとも言える存在になっている。
「これを一杯やればそれで充分だ」
「じゃあその間に僕は」
「書き終えればいいさ」
 声が優しいものになっていた。こうした気配りもできるのだ。
「じっくりとな」
「じゃあそれから。後楽園にだね」
「行くか」
「うん、今年最後の試合に」
 こう言葉を交えさせながらそれぞれコーヒーを飲み仕事を終わらせる。それから後楽園に行くと。もう観客席は満員でいたるところに本田が嫌い抜いている旗が見えた。
「何処のナチスかソ連だ」
 彼は共産主義が嫌いである。当然全体主義も。当時は別のものと思われていたが彼は同じものとして考えていたのである。
「それか北朝鮮か」
「北朝鮮か。あそこは胡散臭そうだね」
「御前もそれはわかるか?」
「まあうちの会社は北朝鮮嫌いだしね」
 当時は親北派が大手を振って歩いていた時代だ。しかし二人のいる新聞社はそうではなかった。だから北朝鮮に対しても素直に語っていたのだ。
「それを抜きにしても」
「特撮ものの悪役だ」
 本田は忌々しげにこう言い捨てた。
「あの国はな。そんな連中だ」
「巨人ファンは幾ら何でも」
「ああ、流石にそこまでじゃない。さっきのは言葉のあやだ」
「そうだったんだ」
「それでも。これは」
 また周囲を見回す。やはり見渡す限り黒とオレンジだ。言うまでもなく巨人の色だ。とりわけ黒い帽子にオレンジのあの巨人のマークが目立つ。それを見て本田はさらに不機嫌になるのだった。
「カルトみたいだな」
「確かにね。ファンの僕から見ても。阪急ファンは僅かだよ」
「元々ファンは少ないさ」
 阪急はあまり人気があるチームではない。これは本田もわかっていた。
「人口の割合でも巨人は圧倒的さ。驚くことじゃないさ」
「そうなんだ」
「ああ。それでもだ」
 しかし言うのだった。
「これはな。また随分と」
「凄いことになってるね」
「面白いさ」
 本田はニヤリと笑った。
「多い方がな」
「多い方が面白い?」
「ああ。あいつに敵の声が聞くものか」
 あいつと言った。
「あいつにはな」
「何か知らないけれどかなり凄い人が阪急にはいるんだね」
「御前もよく知ってる人間だぞ」
「僕も!?」
「ああ、よくな」
 それをまた言う。
「知ってる筈だ。気付かないか」
「阪急の選手だよね」
「他に誰かいるか?」
 とぼけてしまった小坂に対して思わず苦笑いになった。
「阪急が試合す
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