狐珀アマルティア
悲しき現実・付けられた名
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うしても狐珀の涙が忘れられなかった
「嫌だよ・・・なんでだよ・・・」
そんな雨に打ちつけられることにも気づかず、狐珀はただただ泣いていた。顔を覆った手の平の隙間から流れる涙は雨にかき消される
「ボクは・・・こんなことしたくないのに・・・・・・なのに・・・」
先程まであった殺意等、微塵も感じることが出来なかった。
雨に濡れ水を吸った漆黒の羽と、びしょぬれになってしまったマフラーは次第に光りの粒子となり、夜のように薄暗くなった町に消えてゆく。
―――フラクシナス―――
「なに?この数値・・・」
狐珀の正常時から、先程は大きく怒りのメーターが上がり、先程マフラーに穴をあけられた時には殺意も急上昇し、今度は全てが通常以下となる。まるで、二重人格のような不安定な精神状態。
不可視迷彩機能の付いているカメラから艦橋のモニタに移される狐珀は、静かに泣いていた。
先程までせわしなく動いていたクルー達は静かにそちらに目をやった。
「士道・・・今なら対話出来るかもしれないわ」
「あぁ」
一瞬の間をおかず、士道はモニタから目をそらさない琴里の考案に乗る。
すぐさま士道の足は、瞬間移動出来るという夢のような空間に向かっていた。
今なら助けられる。
自然とそう頭の中で考えていた。勿論、マイナスな考えが無い訳ではないが、それだけが強く思うことが出来た。
「瞬間移動開始。場所、天宮商店街」
スピーカーから聞こえてきた琴里の声に、決心を固める。
胸に当てた拳の力は無意識と強くなっていた。
淡色な壁の見えていた視界が思いっきり下にブレ、ジェットコースターのほぼ直角の急降下なんて比にならない程奇妙な浮遊感に苛まれる。
かと思えば、続いてザーという地面に雨が打ち付けられる音が聞こえる。周りには心霊スポットのように無人の商店街が見えていた。幸いにも上にはかまぼこ状のビニールが張られている場所であった為士道は濡れることなく現在おかれた状況が分かった。
瞬間移動したのだ。
最後に聞こえた琴里の声が、脳裏をよぎった。
10回程度だろうか、今まで生きてきた16年間に味わった。しかも全て最近・・・
「シドーか?」
隣からとても可愛らしく、そして不安の混じった声が聞こえる。
ふっと隣を見ると、夜色の髪をし、水晶の如き双眸をウルウルとさせた少女、夜刀神 十香が八百屋の奥から士道を見ていた
「十香か?無事か?」
「ぶ、無事だ・・・しかしキツネが・・・」
商品棚を避けながら十香が士道の元までやって来る。
そして、二人とも狐珀のいた大通りに目を向ける。
そこには、金色の髪を雨に濡らし、シャワーを浴びた後のような状態になっている一人の少年が豪雨の中ぽつりと道路のど真ん中に立っていた。
「狐珀・・・」
士道の口か
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