狐珀アマルティア
悲しき現実・付けられた名
[1/7]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「俺のもんを奪うんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!」
叫びにも思える怒号が顎が外れんばかりに開いた口からスピーカーのように十香の耳にキーンと耳鳴りを発生させる。
と、同時に、その場からまるで瞬間移動のように残像を残し、狐珀が消えた。否、一瞬にして移動したのだ。上空、丁度ASTもいる高度であろう上空に、巨大な羽を大きく羽ばたかせて上空に浮遊している狐珀がいた。
一瞬驚きに目を見開いていた隊員が、隊長であろう女の射撃命令と共に白い煙の軌跡を描きミサイルを発射し、空を切り弾丸が発射される。四方八方から襲ってくるその弾丸、それを待ち受けているのか、狐珀はほんの少しも動かなかった。
仕留めた!
ASTの誰もが、一人も例外無く、そう直感した。それもそうだ、狐珀に全段命中、一発も外れる事無く、ミサイルの爆風から逃れる姿も見せず、その場に浮遊していた狐珀に、見事に命中したのだ。
地上にいた十香は、全く状況が分からなかった・・・しかし、一つ分かっていることがあった。
狐珀は死んでいない
そう直感した。ASTと真逆であり、どちらかが正解すればどちらかが外れる。
そして、ミサイルによる大きな煙が薄れて行く頃、初めて精霊を仕留めた歓喜に皆が勝利の余韻に浸っていた。そんな時、うっすらと、おぞましいシルエットが映った。細長く、少し反った体の肩甲骨辺りから生えている人間程もあるんじゃないかという位大きな鳥のような羽、それとは別に細く長いなにかが爆風により強くはためき、真っ赤な眼光が見えた。
抱き合っていたASTの隊員達はその姿に、絶望した。
ぞくっと、身震いがした。
背筋が凍り、口から心臓が飛び出そうだった。
まるで金縛りでも起こったかのようにそこから目線を反らすことが出来ない。
白黒させた目に先程までの歓喜は消え去った。
しかし、その中たった一人だけ、銃を人影に発砲した隊員がいた。肩をくすぐる程度の銀色の髪を軽く揺らせ、通常の狐珀にも似た人形のような顔は一切変わらず、軽くひねるだけでも折れそうな華奢な腕で、マシンガンを乱射し始める。
「・・・」
その人影は避けることがなかった。
そして、弾丸が煙に穴を開けると同時に、そこから煙が広がるように消えてゆく。
漆黒の巨大な羽を小さく羽ばたかせ、マフラーには2発の弾丸が当たったのであろう、2つの弾丸程の穴が開いている。そしてなによりも、その殺意に満ち満ちた血塗られた瞳が発砲した少女へと向けられる。
彼女の身体もようやくその殺意に気づく。持っていた銃を手放しそうになる。
「お前か・・・」
短い声が、無音となった住宅街に響く。
全員の恐怖の嵩が倍増した。
体が恐怖の海に呑み込まれる。
全身が震える。
自然と心拍数は上がり、ASTに入ったことを後悔した。
目の前から狐珀が残像を残して消える
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ