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八神家の養父切嗣
三十六話:思惑
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理だ」
「……理由は?」
「AMFで囲まれた地上本部に生身で乗り込み、魔法無しに数百人単位でいる警護の者達を相手にしてなおかつ厳重な防壁で封鎖された会議室に乗り込める確率は? そこからさらにレジアス中将と落ち着いて話ができる確率は? ゼロとは言わないが不可能に近い。それでも明日は参加するのか?」

 口早に説明された説明にゼストは黙って目を瞑り考え込む。AMFで相手の魔法の一切を封じ込む。それは一見理想の作戦のように見えるがデメリットも存在する。それは戦闘機人とは違うゼストやルーテシア、アギト、切嗣もまた魔法が行使できなくなるという点だ。

 ゼストは一線級の騎士である。そのため魔法が使えなくとも数十人程度なら切り伏せられるだろう。だが、魔法が使えなくては数百人単位での相手は無理だ。さらに言えば公開意見陳述会の護衛は精鋭揃いである。肉体的にも相当に鍛えられた者達が警護する。流石のゼストもそれらを相手にして目的を達成できる可能性は限りなく低い。

「ルーテシアも参加する。今回は規模も大きい。手助けするにこしたことはない」

 しかしながら、ゼストは作戦への加入をためらわない。それはルーテシアの為である。ルーテシアはかつての部下の忘れ形見と言ってもいい存在。それを守り抜くことこそが部下の未来を奪ってしまった自分のせめてもの償いだと思っているからである。

「そうか。まあ、僕に止める権利はない、好きにすればいい。参加しないのならあなたにやってもらいたいことがあったんだが仕方ない」
「……エミヤ、一つ聞きたいことがある」
「なんだい?」
「アインスの手の平にできたまめは―――銃を持たせた影響だな?」

 夜の闇の中にゼストの声が吸い込まれる。切嗣は無表情のままゼストを見つめ返す。それが答えであった。切嗣はアインスに―――愛する妻に戦場に立たせる訓練を施し始めたのである。誰かを殺し、誰かに殺されるかもしれない死と隣り合わせの戦場に。しかも彼女が魔法を使えないということは結論から言えば質量兵器以外にない。

「今までお前は曲がりなりにも彼女を争いから遠ざけようとしてきたはずだ」
「それはどうだろうね」
「そのお前がどういう心変わりだ」
「必要か不必要だけだよ。僕が根拠にすることはね」

 お互いに目を反らすことなく話し続ける。どちらも戦場に立ち続けてきた者だ。睨み合いになったところで臆することはなく、弱みを見せることもない。だが、武人であるゼストと暗殺者である切嗣では化かし合いは切嗣に軍配が上がる。

 ゼストは目を反らし大きく息を吐く。これ以上は何を言ったところで無駄だろうと諦めたのだ。非武装員が戦場に出るなどという行動に納得がいかない。しかし、本人達が望んでのことであれば止めない。彼はそういったある種の潔さも持ち合
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