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第二章

「何や、随分早いな」
「もう最後の一本かいな」
 権助と朝太が言う。夕方にはじめて何日かやってそれがもう終わりに近付いている。二人はそれを見て言うのであった。
「さて、それはそうとあと一本」
「これが消えたら」
「何が起こるかやな」 
 染吉も二人に対して言ってきた。今は真夜中であり灯りはその最後の一本だけだった。これさえ消えればもう灯りはなくなる。しかし三人はそれでも平気な顔で笑っていた。
「ほんまに鬼出るかな」
「それとも大蛇が」
 また鬼か蛇かだった。
「それが楽しみやな」
「食うような奴が出たら逃げるか」
「一応これは持って来たわ」
 染吉がこう言って塩を出してきた。言うまでもなく退魔の塩である。
「これ投げて逃げるか」
「そやな。これが切り札になるな」
「その時はな」
 こう言い合ってからやっと本題に入る。その最後の話だ。それが終わり遂に最後の蝋燭の火が消された。部屋の中が真っ暗になったその瞬間だった。
「!?何か出たで」
「ああ、これは」
 まず出て来たのは。なめくじだった。なめくじといってもその大きさはかなりのもので人と同じ位の大きさがある。異様ななめくじである。
「なめくじ!?」
「ひょっとしたらこれがか」
 こう思っていたら次は。蛙が出て来た。
「今度は蛙やで」
「ああ」
 やはり人と同じ位の大きさがある。巨大な蝦蟇蛙であった。
「なめくじに蛙っていうとや」
「出て来るのはやっぱり」
 三人が予想すると。それが見事に当たったのだった。
 蛇であった。これまた実に大きな大蛇がとぐろを巻いていた。その姿で三人の前に姿を現わしたのだ。
 これで三つ出揃った。しかも三人を囲んで。ここで彼等はあることに気付いてしまったのだった。
「おい、まずいで」
「まずいな」
 染吉の言葉に朝太が頷く。
「このままじゃ俺達出られないぞ」6
「どうする?」
「塩使うか?」
 権助が言ってきた。
「今こそ塩を使ってやな」
「塩でどうするんや」
「なめくじや」
 彼はなめくじを指差して言う。
「なめくじにかけてしまえ。それで溶かして」
「あほっ、それやったらあかんやろが」
 染吉が彼を叱ってきた。
「なめくじに塩使ってどないするんや」
「なめくじいうたら塩やろが」
 しかし権助はなおも言うのだった。
「そやから塩をやな」
「それでなめくじ消したらどうなるかわかっとるんや」
「そやそや」 
 朝太も参戦してきた。しかし権助はまだわかっていない。
「何かあるんか?」
 こう言う始末だ。やはりわかっていない。
「あるに決まってるやろ。なめくじ消すやろ」
「ああ」
「蛇が暴れるわ」
 それであった。なめくじは蛇の天敵なのである。だから蛇は動かない。
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