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第一章
百物語の結果
「やってみるか」
「そやな」
大阪での話だ。町人の若者達が長屋の外であれこれと話している。見れば三人いていずれもわりかし洒落た服装をしている。少なくとも江戸より派手だ。
「丁度暇やし」
「やってみよか」
「ああ。じゃあ蝋燭用意しようで」
話が決まると早い。三人のうちの一人、出っ歯の若者が蝋燭を出してきた。
「百本やろ?」
「そや、染吉」
一重瞼の若者がその出っ歯の名前を呼んで答えた。
「百本や」
「わかった。ほな百本やな」
「ああ。それで朝太」
一重の若者は団子鼻の若者に声をかけてきた。
「御前は何を出すんや?」
「わしは本借りてくる」
「本か」
「そや、貸本な」
当時は本は高価なものだった。だから庶民は大抵貸本を借りて読んでいたのである。これが中々繁盛していて人気商売だったのだ。
「それ借りてくるわ」
「わかった。じゃあ頼むで」
「でや、権助」
染吉が団子鼻の若者の名前を呼んできた。
「ああ。俺やな」
「部屋は御前の部屋でええな」
「おとんとおかんは丁度今江戸に行っとるしな。丁度ええな」
「そや、じゃあ部屋は御前で」
「蝋燭は御前で」
「本は俺や」
染吉と権助と朝太はそれぞれ言うのだった。彼等は何かをしようとしていた。
「百物語か」
「話には聞いとるけどな」
染吉と朝太は少し考える顔で述べてきた。
「どうなるんやろな」
「何が出るんや?」
「それはやってからのお楽しみやな」
権助が二人に言うのだった。
「鬼が出るか蛇が出るか」
「幽霊かな」
「それもあるで」
百物語をすることを考えていたのだ。百話終わったその時に何が起こるのかということに興味があったのだ。それで行うことにしたのである。
「とにかく。何が出るか見ようか」
「そやな。何が出るかわからんし」
また口々に言い合う。
「それが楽しみやな」
「ひょっとしたらや」
ふとした感じで朝太が二人に言ってきた。
「鬼が出て来てわし等頭からバリバリっていかれるんかな」
「そうなったらどうする?」
「どうするって御前そうなったら」
権助は今一つわかっていなかったが染吉は少し考えてから述べる。
「その時はその時は」
「そうか」
「そや。その時はもう出たら逃げる」
結論はそれであった。
「大阪人はそやろが」
「まあそやな」
「侍とちゃうしな」
大阪は町人の町だ。武士は殆どいない。武士を一生の間全く見たことのない者すらいる。そんな彼等が武士の様に生きることはないのだ。
「じゃあ逃げるか」
「それが一番やな」
「そういうことでな」
これで話が決まった。かくして彼等は権助の長屋の部屋に集まり百物語をす
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