巻ノ三十五 越後へその十
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「堀も入り組み深い」
「あの地の川を巧みに使い」
「そうだと言われるのですな」
「あの城は容易には陥ちぬ」
「生半可なことでは」
「流石は秀吉公と言うべきじゃ」
幸村は城を築いた幸村のことも言った。
「十万の兵で陥ちぬわ」
「何と、十万の兵でもですか」
「あの城は攻め落とせませぬか」
「それだけの軍勢で攻めても」
「あの城は」
「そうじゃ、しかしいつも言っておるが」
幸村はその目を光らせた、そのうえでの言葉だった。
「攻め落とせぬ城はない」
「例えどの様な堅城でもですな」
「人の造った城」
「ならば攻め落とせぬ城はない」
「そうだというのですな」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「だからじゃ」
「その大坂城も」
「攻め落とすことが出来ますか」
「天下の堅城でも」
「それでも」
「城を攻めずとも城にいる人を攻めることは出来る」
兵法も言うのだった。
「人をな」
「城を攻めるのは下計」
「されど人を攻めるのは上計」
「だからですな」
「大坂城を守る人を攻めれば」
「攻め落とせますか」
「うむ、人が最も大事じゃ」
ここで言う『人』とは何かもだ、幸村は言った。
「これは城だけではないな」
「はい、政においても」
「あらゆることにおいても」
「まずは人ですな」
「国も人が創るもの」
「大殿がいつも言っておられますな」
「兄上もそう考えておられ」
幸村は彼の兄である信之のことも言った。
「そして拙者もじゃ」
「ですな、殿も」
「いつも我等に言っておられますな」
「人が最も大事であると」
「その様に」
「うむ、やはり人は城であり石垣なのじゃ」
武田信玄の言葉も出した、幸村にとっては永遠に仰ぎ見る存在である彼を。
「人が大事じゃ、だからな」
「あの大坂城も」
「守る者達が駄目であるなら」
「攻められてそれで敗れれば」
「陥ちますか」
「そうじゃ、どの様な城もじゃ」
これが幸村の考えである、常にこう考えこう言っている。
「そういうものじゃ、そしてな」
「はい、これよりですな」
「越後の人に会いに行きますか」
「景勝公、そして直江殿にも」
「これより」
「行くぞ」
こう言ってだ、そのうえで。
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