巻ノ三十五 越後へその九
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「後は春日山に入りな」
「そこで、ですな」
「我等は暫しの間過ごしますな」
「人質として」
「そうじゃ、人質ではあるが」
表向きは客人となっている、しかしその実は言うまでもない。戦国の世にあってはこれは常にあることである。
「学ぶことは出来る」
「存分にですな」
「それが出来ますな」
「そして鍛錬もしよう」
それも忘れていなかった。
「剣術に忍術にな」
「ですな、我等も」
「鍛錬をしましょう」
「雨の日も雪の日も」
「それはしましょうぞ」
「鍛錬は日々してこそじゃ」
まさにとだ、幸村も言う。
「だからな」
「はい、それでは」
「まずは春日山に入りましょう」
「そしてですな」
「学び鍛錬をして」
「日々を過ごしましょう」
「そうする、それと春日山の城であるが」
この城のことも話すのだった。
「非常に広くな」
「そして高く」
「かなり堅固ですな」
「凄い城ですな」
「天下の名城の一つと言われている」
そこまでというのだ。
「だからな」
「その城もですな」
「見ますか」
「そして城のことも学ぶ」
「そうされますな」
「そのつもりじゃ、上田の城は十万石の城であるが」
それでその規模も限られているというのだ、十万石の力では築城も限られている。そのことも頭に入れて言った言葉だ。
「あの城は違う」
「その名城も見て」
「学ばれますか」
「城のこともな」
「そういえば大坂の城も」
ここでこの城のことも思い出された。
「あの城につきましても」
「もう完成したそうだな」
「はい、その様です」
「天守閣も築かれ」
「そして他の櫓も城壁も門も整い」
「堀も出来上がったとのこと」
「あの城は間違いなく天下の城」
幸村は大坂城についてはこうまで言った。
「春日山城もかなり堅固であろうが」
「それでもですか」
「大坂城には劣りますか」
「あの城よりは」
「安土城も堅城であったであろう」
一行が見たのは既に廃城になろうとしていた安土城であった、だから幸村はこの城については寂寥を込めてこう言ったのだ。
「しかしその安土城よりもじゃ」
「大坂城はですか」
「堅固ですか」
「あの城は」
「城壁、櫓、門が整い」
そしてというのだ。
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