暁 〜小説投稿サイト〜
真田十勇士
巻ノ三十五 越後へその七

[8]前話 [2]次話
「御主達は直江兼続殿を知っておるか」
「上杉家の執権の」
「景勝殿の片腕と言われる」
「北陸一の人という」
「あの方ですか」
「そうじゃ、越後にはその御仁もおられる」
 兼続、彼もというのだ。
「その方にもお会いする」
「越後に入れば」
「景勝殿だけでなく」
「その直江殿にもですな」
「お会いしますな」
「どうもな」
 幸村は少し微妙な顔も見せて言った。
「直江殿は拙者に興味があるとのこと」
「殿ですか」
「直江殿は興味がおありですか」
「そうなのですか」
「その様じゃ」
 このことを話すのだった、十勇士達に。
「そう聞いておる」
「その上杉家の執権の方がですか」
「殿に興味がおありですか」
「そうなのですか」
「不思議に思っておる」
 兼続が自分に興味があることをだ、幸村は実際にそう思っていた。その感情を顔に出して十勇士達に話した。
「何故拙者の様な者をとな」
「上杉家の執権ともあろう方が」
「越後と佐渡を治める上杉家の方が」
「殿にと」
「そうじゃ、上杉と真田を比べれば」
 それこそというのだ。
「当家は小さいな」
「お言葉ですが」
「確かにそれは」
「上杉家は百二十万石です」
「佐渡の金山からかなりの富も得ています」
「しかし当家は十万石」
「金山もありませぬ」
 十勇士達もそれぞれ幸村に答える。
「そう考えますと」
「やはりです」
「何故直江殿が殿に興味がおありか」
「わかりませぬな」
「所詮人質の一人に過ぎぬ」
 幸村はこうも言った。
「それでどうしてなのか」
「ううむ、そう言われますと」
「確かにわかりませぬな」
「上杉家程の家の執権ともあろう方が」
「この様な小さな家から入る立場に」
「殿ご自身を見られるならともかく」
「拙者なぞな」
 所詮はとだ、幸村は自身のことも言った。
「小さい者じゃが」
「いえ、殿ご自身はです」
「まさに天下の傑物」
「我等も今気付きました」
「殿を見られれば」
 幸村自身をというのだ。
「それならばです」
「直江殿が殿に興味がおありなのも納得出来ます」
「これはもう家の格の話ではありませぬ」
「人の質の話ですな」
「そうなるか」
 幸村は十勇士の言葉を聞き再び考える顔になって述べた。
「拙者を買って下さりか」
「そうではないかと」
「我等はそう思いまする」
「そうであれば嬉しいな」
 素直に言った幸村だった。
「拙者を買って下さっているなら」
「いやいや、先の戦でのご活躍があります」
「若殿もそうですが」
「殿のご名声は天下に響いております」
「無論越後にも」
「だからか」
 幸村は彼等のその言葉に頷いた。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ