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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十話 俺と、私にできること 後編
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 息つく間もない、声の弾丸。

 だが、放たれ続けるうちにそれが声の弾丸ではなく、口から出される呼吸……つまり『風』の弾丸であることを見切る。
 
 いわゆる空気砲。

 彼女は魔力を乗せ、空気の弾丸として放っていたんだ。

 俺は何度も回避を繰り返しながら言葉を返す。

「俺が、何をしたって?」

「勝手にいなくなっただろ!」

「ぐ……ぁっ!?」

 回避できないほどの大きな空気砲の直撃。

 俺は直撃を覚悟していたが故に吹き飛ばさないよう、足に魔力を込めて踏ん張る。

 が、そのあまりの威力に足が地面を削りながら後ろに下がっていく。

 空気砲が止まった所で俺は、息を荒げながら膝をつく。

 五年前の柚那から想像できないほどの魔力量、そして魔力の質。

 そこから放たれる高威力の攻撃。

 驚き、混乱、激痛。

 様々な状況が俺の力を奪っていく。

「五年前、勝手にいなくなってから、お姉ちゃんはずっと悲しんでたんだ。 アンタのせいで! アンタが、ずっとお姉ちゃんを苦しめたんだ!」

 今度の言葉には、魔力がない。

 だから届くのは声と、悲しみと怒りの感情だった。

 暗くてはっきりとは見えないけど、柚那が泣いているのも分かる。

 だけど、俺は言葉が見つからず、ただただ黙って聞いていることしかできなかった。

「なのになに食わぬ顔で現れて……一体何様のつもり!?」

 まだ、きっと言いたいことはあったのだろう。

 けれど俺たちの騒動に気づいた街の人たちがこちらに迫ってきた。

 このまま見つかれば、俺達はただでは済まない。

 柚那は雪鳴を無理やり引っ張りながら、夜の街に去っていく。

「アンタは絶対に許さない。 ずっとお姉ちゃんを苦しめた、アンタだけは!!」

 そう言い残した背中は、まだそう遠くないはずだ。

 なのに俺には、ひどく遠く感じた。

 やがて、その背中が完全に見えなくなった時に、ふと過ぎったのは柚那に引っ張られた雪鳴の表情。

 あれは申し訳なさそうな、だけどこれ以上言葉の見つからないような……そんな表情。

 きっと柚那の言葉に間違いがなかったのだろう。

「……くそっ」

 心に伸し掛る、重くて黒い何か。

 迫る野次馬から逃れるように、建物を壁伝いに屋上へ駆け上がり、屋根から屋上へ飛びながら移動した。

 逃げながら、逃げられない現実を目の前に――――

「くっそぉおおおお!!!」

 自分のしてきた間違いに気づかされ、その怒りを吐き出した。
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