暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第百二話
[8/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
よほど大人だ。そんなことを心中で愚痴りながら、あまり言いたくない方を観念して白状する。

「……床屋」

「は? 床屋?」

 ようやくぼそりと呟いた言葉に、心底理解できなさそうなリズの疑問の声が重なった。

「床屋っていうよりひげ剃りか。だって怖いだろう……首に抜き身の刀向けられてるのと同じなんだ……」

「あー……じゃあ、髪のカットはカットだけみたいなとこで?」

 床屋といっても正確には――ひげ剃りという過程について。微妙に納得したような呆れたような、そんなリズの表情がころころと千変万化していく。

「そうだな。美容室とか魔境」

「魔境ってあんた……でもなんか、わざと変な話して、本当のははぐらかされた感じよねー」

「っ」

 どこかの探偵のように手を顎に置いて考える動作をしながら、俺を下から覗き込んでくるリズの桃色の瞳に、心を見透かされているようで目を逸らす。そんな俺の動作に勝ち誇ったリズが、腕を組んで勝利したようなポーズを取るのを見て、やけ酒のようにジュースを飲む。

「……床屋が苦手なのは本当だよ」

「ま、今はそれでいいでしょ。これからおいおいと、一緒にいるんだから。お互――」

「お互いにな」

 先んじてそう言い放つと、少しだけリズが椅子ごと近づいてきた。ゆったりとした空気が支配する中――視界の端に野武士のような顔が映る。

「……なんだクライン」

「んな顔されても、オレだって好きで来たわけじゃねぇっての。そこのリモコンに用があるんだよ」

 あまりそういった感情を思っていたつもりはなかったが、どうやら表情には出ていたらしい。相変わらず不便な世界だと思いながら、クラインが指差していた先を追うと、机の上にリモコンが置いてあった。それをクラインに渡してやると、すぐさま窓に向かってスイッチを押す。

 すると雪景色を映していた窓はテレビ画面のような平面に変わり、窓がよく見える席に座っていた俺たちは、少し離れたソファーへと席を移る。キリトたちの家の窓は、スイッチ一つでテレビにもなるとのことで。

「あーっ! クラインさん、外見えないじゃないですかー!」

「うっせ、どうせ誰も見てなかっただろ」

「それは窓際でショウキさんとリズさんがイチャつい――ふぎゃっ!」

 しかし当然テレビ画面になってしまえば、外の景色は見ることは出来ない。そうクラインへの抗議をした――ついでに、余計なことまで口走り始めたシリカに、リズの上方からのチョップが炸裂する。

「そろそろセブンちゃんの年末ライブなんだぜ? 聞いてみろって!」

「ああ、いい歌だよ」

 そう言ってリモコンを操作するクラインとルクスが勧める中、窓だったテレビ画面いっぱいにライブ用のスタジアムが
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ