第百二話
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にしたい気もするわね……」
「クラインに頼め」
「やらねぇって言ってんだろうが!」
伝説級武具を解体すると、最高級のインゴットが姿を表すらしい――という情報を聞いたリズの手が、無意識にハンマーを振り下ろす動作に変わる。向こうからサラマンダーの抗議の声が聞こえてきたため、ひとまずそんなもったいないことは阻止されたようだ。
「そういや……SAOからもう随分経ったんだな」
「何よいきなり」
改めて腰に装着された《メギンギョルズ》を眺めながら、俺はふと、そんなことを呟いていた。何か考えていた訳ではなく、全くの無意識に。そのためか、遠くのサラマンダーと舌戦を繰り広げていたリズも、怪訝な表情をこちらに見せていた。
「いや……何となく」
「変なの。ま、言われてみればそうかもね」
何となくとしか言いようがなかったが、そんなこちらの言葉にリズは困ったように苦笑すると、量が減っていた俺のコップになみなみと注いでいく。軽食をつまみながら窓の外を眺めてみると、外はもう雪が深々と積もっていた。
「おいリズ、ありがたいけど多すぎる」
「まあまあ。しっかし……あんた、何が苦手なんだっけ?」
なみなみと注がれすぎて飲みにくいカップを、こぼさないように注意しながら口に運んでいると――リズの口から、唐突にそんなことが紡がれた。ここでジュースをこぼさずに飲めたのは、日頃の鍛錬で鍛えられた証左だろう……こんなところで発揮したくはないが。
「いきなり何だ、そっちこそ」
「ほら、巨大ムカデの時に言ったじゃない。あんたが苦手なもの教えるって」
巨大ムカデ――あのエクスキャリバーのダンジョンで遭遇した、十本足のムカデ型邪神のことだろう。はて、そんなことがあったか――と考えてみると、確かリズが虫が苦手という話から、ボス戦が終わったらこちらの苦手なことを教えるとか教えないとか。
「……言ったか?」
「言った言った」
こちらの記憶には、リズが無理やり「……あたしの苦手なものを知ったんだから、こいつ倒したらショウキの番よね」――と、完全にリズの自爆からの責任転嫁だったような覚えがあるのだが。まあ、リズがそこまで自信満々なのだから、きっとこちらの記憶違いなのだろう。
「子ど」
「あ、子供の相手苦手〜とかいうのは、アスナから聞いたことあるからそれ以外でね」
……せっかく答えようとしたのに、その直前で潰されてしまった。太陽のような笑顔のリズと真顔のこちら、端から見たら異様な光景に見えたに違いない。
「…………」
「どうしたの?」
そもそも子供が苦手、というのもまるで発揮されない故に秘密だというのに。強いて言えば年齢的にはユイだが、目の前でニヤついているピンクより
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