レベル1 最高の鍵は最硬の槌である
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哀手 樢はなんとなく快晴の空を見上げた。
意味も無く見上げただけの空は、どこまでも明るくて、希望に満ちていた。
「いい天気だなぁー」
そう呟くと、彼女の体中に漠然とした期待が充満していった。
「なんかいいことありそう」
だが上ばかり見ていては歩けない。樢が目線を前に戻すと、
「探したぜぇ……。痛い目に遭いたくなければおとなしくサンサーヴを寄越しなぁ……!」
カードの束を構えた変な少年がいた。
「ひ、人違いじゃないでしょうか?」
樢は関わり合いたくなかったのでそそくさとその場を離れようとしたが、
「ごまかしたって無駄だぜオイヨォ」
首根っこをガッチリと掴まれてしまった。
「俺は最強のハンターになる男、ルベーサだぁ。この俺相手に嘘つくたぁいい度胸じゃねぇかよぉ」
ルベーサは樢と同じか少し下ぐらいの歳だろうか。だが少なくとも、中学生時代の後輩ではない。
見知らぬ少年が、目を危なげにギラギラさせながら、自分を凝視している。
「い、いや、そう言われてもそのサンサなんとかなんて全くもって知らないのですが……」
樢はとにかく去りたい一心で受け答えしたが、ルベーサの表情は変わらない。
「嘘言うんじゃねぇ。てめぇの体内からサンサーヴの気配をビンビン感じるんだよぉ」
「それ、気のせいじゃないんですか?」
「気のせいだぁ?ありえねぇ。馬鹿じゃねぇのかぁ?」
「なんで?」
樢は段々イライラしてきた。
「高かったんだぜぇセンサー。これでパチもんならセレブがバブルショックだぜぇ」
そんなことを言われても、樢自身に覚えが無い。
「知らないわよ。騙されたんじゃない?とにかく、私はそんなの知らないから」
「嘘をつくなぁ!」
「ついてないってば!」
(あぁもう、誰でもいいから助けて!)
樢が心の中でそう叫んだ時、
ピピピピー
突然、何かが起動したような電子音がした。
そして、樢とルベーサの周りの地面に丸い穴が空く。
何かよく分からないまま少年に首を掴まれて後ろに引っ張られていると、ウゥゥゥンというエレベーターのような音がして、半透明の筒状の物がゆっくり回転しながらせりあがってくる。
「……」
樢はその様を呆然と眺めていた。
せり上がるのをやめたそれから、プシュゥゥといった排気の音と流れがすると、筒状の側面が殆ど降りていって、その中身が、見えてきた。
男児だ。
小学生ぐらいの男児が、フカフカの椅子に座って、丈夫な机に突っ伏してすやすやと眠っていた。
「……」
わけが、分からない。
「おい、」
ドサクサに紛れて逃げられるかとも思ったが、それより速くルベーサが言葉を刺した。
「このまんまじゃ話が終わんねぇ」
ルベーサは樢から手を離した。
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