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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十話 それぞれの思惑(その1)
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つです。先ず、和平を結ぶ事。次に同盟に何らかの謀略を施し、軍事行動を起させない事。最後にこれまで以上に攻勢を強め、同盟の戦力を枯渇させる事です」
私は一旦言葉を止め、二人の表情を見た。シトレ本部長が軽く頷き、続きを促す。
「和平は有り得ません。それは帝国の国是に背きます。となれば残るのは謀略と攻勢です。謀略はフリードリヒ四世が何時死ぬか判らない以上、どの時点で行なうか確定できません。となれば現状で帝国がとる手段は攻勢を強める事しかないんです。幸い帝国にはヴァレンシュタイン少将がいます。万一の事があっても、ある程度の期間なら静謐を保てるとミュッケンベルガー元帥は今回の件で確信したでしょう。何もしなければ同盟は戦力を回復させ、内乱が起きた時必ず軍事行動を起します。帝国に選択肢は無いんです。おそらく年内にも出兵が有るでしょう。」
シトレ本部長もキャゼルヌ先輩も苦い表情をしている。二人は違う答えを望んでいたのか。
「ヤン大佐、君は私が宇宙艦隊司令長官になるのが最善だとキャゼルヌに言ったそうだね」
「はい」
「私には異存は無い。国防委員会に宇宙艦隊司令長官になってもいい、いや、なりたいと伝えた。しかし、残念ながら却下された」
「それは何故でしょう」
「理由は私が宇宙艦隊司令長官になれば、宇宙艦隊が統合作戦本部より強い力を持ちかねない。それは軍の統制上好ましいことではない、そういうことだった」
「なるほど」
一理有るのは確かだ。では誰が司令長官になる?
「現時点で宇宙艦隊司令長官に上がっているのは、第一艦隊司令官クブルスリー中将、それから国防委員会情報部長ドーソン中将の二人だ」
「ドーソン中将ですか、しかしそれは」
酷いな。彼に宇宙艦隊の再建など出来るとは思えない。
「君の言いたい事はわかる。しかしおそらくドーソン中将に決まるだろう。政府は帝国が内乱を恐れて出兵を控えるだろうと考えているんだ」
だからドーソン中将でも務まるという事か。最悪だ、内乱を恐れて必死の帝国軍に対し、凡庸とまで言われているドーソン中将が何処まで対応できるか? シトレ本部長もキャゼルヌ先輩も渋い表情になったはずだ。
「ヤン大佐」
「はい」
「君は今度、准将に昇進する」
「昇進ですか」
「そうだ。宇宙艦隊司令部の作戦参謀として君の智謀を振るってくれ。君の考えが正しければ、同盟は厳しい状況に有るようだ」
階級が上がれば、発言力も大きくなる。私の意見を少しでも通り易くしようということか。しかし、ドーソン中将は好悪の感情の激しい人だと聞いている。上手くいくだろうか。私にはとても自信が無かった。
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