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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十話 それぞれの思惑(その1)
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ことを流すのだ。それぞれがどう判断するか、楽しませてもらおう」
■宇宙暦795年5月2日 自由惑星同盟統合作戦本部 ヤン・ウェンリー
シトレ本部長より、統合作戦本部への出頭を命じられ執務室へ行くとそこにはシトレ本部長のほかにキャゼルヌ先輩がいた。キャゼルヌ先輩は今まで本部長と話をしていたのだろうか、本部長の前に立っている。
「ヤン大佐、掛けたまえ」
「はい」
私がソファーに座ると、キャゼルヌ先輩が私に近づき文書を渡した。そのまま、私の前に座る。
「ヤン大佐、フェザーンの駐在弁務官事務所より、今回の帝国の騒動の詳細が送られてきた」
「これがそうですか」
「うむ」
「失礼します」
私は本部長に断ると資料を読み始めた。やはりヴァレンシュタイン少将が動いたか。それにしてもこれは……。
「本部長、随分詳しく書いてありますが?」
「フェザーンが調べた情報だろう。こちらの駐在弁務官事務所ではここまで調べる事はできん。向こうには向こうの思惑があるのだろうが、今回はありがたく利用させてもらおう」
「ヴァレンシュタイン少将が混乱を抑えたのですね」
「そうだ、君の想像したとおりだ。ミュッケンベルガー元帥は今回の事態を最初から想定していたようだ」
帝都防衛司令官代理、憲兵副総監、それに宇宙艦隊、装甲擲弾兵も彼に味方している。これではオーディンは小揺るぎもしなかっただろう。ミュッケンベルガー元帥が兵を引いたのが不思議なほどだ。
「ヤン、お前さんが気にしていた左翼の指揮官もわかっている。ラインハルト・フォン・ミューゼル中将、グリューネワルト伯爵夫人の弟だ」
「……皇帝の寵姫の弟ですか、しかし実力は本物です」
「厄介だな、有能な前線指揮官と前線、後方を任せられる参謀か。ヤン大佐、君は帝国がこれからどう出ると考える」
なるほどこれが本題か
「そうですね、私は帝国が攻勢を強めると思います」
私の意見を耳にしたキャゼルヌ先輩はシトレ本部長と顔を見合わせた。どうやら二人の考えは違うらしい。
「ヤン、帝国は言ってみれば爆弾を抱えている状態だ。その状態で攻勢をかけてくるというのか?」
「ええ、そうです」
「ヤン大佐、その根拠は」
「いずれ起きる内乱のためです」
「?」
シトレ本部長もキャゼルヌ先輩も訝しげな表情をしている。私はここ一週間考え続けた結果を話した。
「帝国では後継者問題が解決していません。いずれ内乱が起きるでしょう」
「そうだ、ならば出兵などできんだろう」
「キャゼルヌ、ヤン大佐の話を聞こう。続けてくれ、大佐」
「はい。内乱が起きた時、帝国が一番避けたいと思っていることは、同盟が軍事行動を起し、混乱に付け込む事でしょう。ではどうすれば同盟の軍事行動を回避できるか? 方法は三
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