第39話
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された虎牢関が物語っている。
鉄製の柄程度では受け止められない、それごと断ち切られ――
「ここだ!」
断ち切れない!
恋の矛が柄に到達する刹那、華雄は矛の側面に柄を沿わせ――
「ハァッッ!」
恋の力そのまま、後方に流した。
『受け流し』
これこそ不器用な華雄が恋を打倒する為、習得した唯一の技である。
本来、大柄な得物で行う技ではない。戦斧でこれが出来るのは、大陸広しと言えど華雄だけだろう。
多種多様ある技の中で、恋に勝ちうるものとして選んだのだ。
無論成功率は低い。そもそも一撃を受け流した所で、恋には大して効果が無い。
彼女の持つ戦いの本能が、すぐさま反撃に転じさせるからだ。
だからこそ華雄は恋の本能による、全力の一撃を引き出した。
全身全霊の剣戟で自分の動きを刷り込み、致命的な隙を演出してまで――
――いける!
そのかいあって目に見える勝機。
全力の一撃が流され空振りに近い感覚の恋は、前のめりに体勢を崩し華雄と肉薄。
対する華雄は受け流しに柄部分を使用する為、持ち手を戦斧の刃近くまで移動させてある。
これにより近距離に斬撃を放つ事が出来る、肉薄した今の状況に最適だ。
敵である恋の身体が、次の動作に移行していくのが確認できる。
この受け流しまでも彼女にとって、一瞬の隙でしか無いらしい。しかし一瞬で――
――十分だ!
戦斧を振り下ろす――その時だ、華雄の動きが止まった。
「ッッ?」
この機を逃せば勝機は無い。この状況に全てを賭けたのだ、仕留められなければ今までの努力が水泡に帰す。
だというのに――
――何故動かぬのだッッ!
違和感。
下腹部に感じたソレを確認しようと目線を下げ――激痛と共に理解した。
拳だ、それが華雄に打ち込まれている。
誰の拳かは確認するまでも無い、相対しているのは一人。
「ガッ……ッッ」
短い苦悶の声の後の浮遊感。
勝機を逃した華雄の耳に、恋の言葉が突き刺さった。
「その技……知ってる」
「!?」
華雄は全てを理解する――油断し、不覚をとったのは自分だと。
恋は得物を右手だけで振り回し、左手で手綱を握っていた。これを華雄は馬上での戦いに不慣れと捉えたが、無論違う。
恋は元々片手で得物を振るう、左手は手持ち無沙汰だったので手綱を握っていただけ。
彼女の左手は『空いていた』のだ。
もう一つ、華雄が失念していた事実がある。
それは恋の『これまで』だ。華雄が血の滲む鍛練を行ってきた期間、彼女は怠惰に過ごしてきただろうか、答えは否。
袁紹庇護の中、その下に集った英傑達との鍛練。
一対一、
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