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恋姫†袁紹♂伝
第39話
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いる華雄はその類稀なる戦術眼、というより勘で左翼の異変を察知した。
 しかし確認しようにも目を向けられない。

 ――今目線を逸らせば

 危機感が鳴らす警告に従い、顔を右に傾ける。

 ――全てが終わる!

 次の瞬間、顔が有った位置を恋の矛が通り過ぎる。直撃は免れたが肩が小さく斬られ血しぶきが飛ぶ。
 現在、華雄と恋は一騎打ちをしていた。

 華雄軍の中に恋と共に残った三百の重騎隊、彼らの持ち味は武力だけではない。
 一人ひとりが隊を率いる水準の猛者、臨機応変に戦術を選択出来るのだ。

 彼等は恋と華雄の周りに居る敵を排除、二人を中心に円陣を組んだ。
 いくら自分達が手練れとはいえ、万に及ぶ華雄兵をまともに相手取るわけにはいかない。
 そこで――将の一騎打ちを成立させる舞台を作り上げたのだ。
 円陣の中に出来た空地、それは奇しくも華雄が初戦で行ったものに酷似していた。

「く、何て堅さだ!」

 外から陣を破ろうとした華雄兵の言葉だ。
 重騎隊の壁は三層から成る。

 前列、近づいてくる敵の対処。
 中列、広い視野で戦場を警戒。
 後列、治療と休憩。

 前列が疲労を感じる又は怪我などした場合、即座に後列と交代する。
 左右と背後は味方が居るので警戒するのは前方だけ、重騎隊達には楽な仕事だ。
 
 対する華雄兵には苦しい状況。
 矢や槍は弾かれ、剣や矛を砕かれ、人は馬ごと吹き飛ばされる。
 通常の槍よりも重圧で長い得物を用いて、近づく者に容赦なく風穴を穿つ。
 最後に完璧な連携、付け入る隙が無い。

 場所も悪い。華雄軍の中心で陣を敷かれている。
 それにより中心以外――外側に居る兵達が戦いに参加出来ずいる。騎馬による突撃に頼りたい所だが、兵士で入り乱れている中心地故にそれも叶わない。

「こうなったら、矢を浴びせて疲れだけでも――」

「よせ! 中には華雄様が居る!!」

 円陣に捕らえられた将も、彼等が攻めあぐんでいる理由の一つ。
 華雄軍の副将が懸命に指揮を執っているが、効果は薄い。
 精神的支柱である華雄を見失った今、士気は下がっていく一方だ。
 
「……華雄様」

 情け無い話だが、内側から壁を崩してもらう以外に展望は無かった。
 
「ハァ……ハァ……、想像通り…いや、それ以上の化け物だ!」

 無論、華雄にそんな余裕は無い。
 今の彼女には戦況処か、戦である事も失念しかねない程に苦戦、集中していた。

 どのくらい剣戟を交えただろうか。半刻も経っていない、恐らく数分。
 しかし華雄は丸一日戦ったかのように疲労、消耗していた。

「……」

 対する恋は涼しい顔、今も華雄の動きを待っている。

「……フッ」

 圧
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