第39話
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る。
まず始めに先頭の恋が得物を一閃、盾ごと兵士を十数人吹き飛ばす。
彼女の突撃で空いた穴を後続が容赦なく広げていく、無論、華雄軍も無抵抗な訳が無い。
しかし刃は分厚い装甲を前に余りにも無力、手練れの者達が薄い箇所を狙うも小楯で弾かれる。
万近い軍勢が千騎に成す術もなく蹂躙されていく、正に悪夢。
遂には逃げ出すように道を空け始めたが、彼等は命が欲しい訳ではない。
左翼で奮戦している張遼軍と同様、命を投げ出す思いで戦に望んでいるのだ。
だが命を賭した一撃は通じず、足止めにすらならない。
彼等が恐れたのは無意味な死――犬死にであった。
「く、敵が……華雄様一旦後方に」
将を後ろに下げようとした側近の男、英断である。
華雄は戦力以上に自軍の精神的支柱だ。もしも彼女が討たれでもしたら、それまで抑圧していた絶望が自分達を襲う。
しかしその判断は――
「馬鹿を言うなッ!」
華雄の心情を汲み取っていなかった。
制止する部下達を振り切るように馬を走らせる。狙うは敵軍の先頭、大火の如く華雄軍を蹂躙している呂布。
「私が戦斧を振るうから、皆が奮い立つのだろうがァァッッッ!!」
「!?」
恋の目の前まで躍り出た華雄は、渾身の力を持って戦斧を振り下ろす。
その気迫に危険を感じた恋は、即座に受へと切り替えた。
瞬間、戦場に金属音が響き渡る。
「やはり、そう簡単には討たせてくれんか……」
舌打ち交じりに悔しがる華雄だが、その一撃は確かな結果を及ぼした。
恋が止まったのだ。それまで誰にも手をつけられなかった彼女が――
それに呼応するように後続の騎馬隊も動きが鈍くなり始める。
「……」
恋は目の前の猛将に感慨を抱く。先程の一撃、明らかに相討ちを狙っていた。
恋であれば、振り下ろす体勢の華雄よりも速く斬り付ける事が出来る。
しかし華雄の只ならぬ気配に本能が危険を察知し、即座に防御に切り替えたのだ。
もし仮に斬り付けていたら――致命傷を負っても尚、華雄は戦斧を恋に振り下ろしただろう。
「と、止めた」
「あの化け物を……」
「華雄様が」
――我等の将が
「華雄様に続けぇッッ!」
『ウオオオオオォォォォォォッッッッッ!!!』
華雄軍の兵士達に闘志が漲る。
敵の騎馬は矢も刃も通さない、狙った一撃も弾く、一人ひとりが手練れ――だからどうした。
それ以上に手の負えない化け物を、我等の将が止めて見せたではないか!
「ねね!」
「ッ! 第一隊はここで呂布殿の援護、後はねねに付いて来るです!」
『応!』
名を呼ばれただけで音々音は恋の思考を把握、隊に指示を飛ばす。
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