第39話
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「ねね」
「後続の報告によると軽傷者が数名、落馬を含め離脱者はいないのです!」
「上出来」
華雄軍と張遼軍による矢の嵐を潜り抜けた恋達は、一人も欠ける事無く両軍に近づく。
この隊の専属軍師である音々音は、彼女専用の親衛隊により守られていた。
「……どっち?」
「左です! ねね達から見て左にいる華雄軍を突破するです!!」
「ん」
両軍の中央を突破する事も出来る。しかしそれを狙えば二軍を相手取る必要があり、いくら精鋭揃いでも苦戦を強いられる。
音々音が華雄軍に狙いを定めた理由は、上記の他に三つ理由があった。
一つ目は両軍の動きだ。近づいてくる重騎兵に備え迎撃の体勢を終えている張遼軍に対し、華雄軍はようやく弓兵達を下がらせたばかり。
これには両将の指揮能力が顕著に現れている。攻めと守りの両方に高い能力を発揮する張遼。攻めに特化し守りが苦手な華雄なら、どちらが組み敷き易いかは一目瞭然である。
二つ目に疲労の度合い。迂回路で二日目以降、局地的に小規模な戦闘を繰り返してきた張遼軍。
開戦から今に至るまで、連合の猛攻を迎撃し続けてきた華雄軍。後者の方が心身共に消費している。
そして三つ目は―――
「あれが華雄の言ってた呂布かいな……なるほど、怪物や」
人物を視認出来る所まで近づいてきた敵騎兵、その最前列に居る赤毛の将を見て張遼が呟く。
武力という観点から見れば張遼のそれも怪物の類だ、しかし眼前に居るアレは次元が違う。
馬は後続と同じく重装だが呂布自体は軽装、身を守る物と言えば手甲位で他は見当たらない。
つまり彼女はあの万に及ぶ矢の嵐を、己の武だけで切り抜けたのだ。
得物で矢を弾くという芸当は水関で華雄も見せたが、それとも比較にならない。
もし自分であれば出来ただろうか? 無理だろう。
仮に運良く切り抜けられたとしても無傷では済まなかった筈だ。矢を数本身体に受け、息も絶え絶えになりながらふらつく姿が想像できる。
だが目の前の呂布はどうだ、傷どころか呼吸の乱れも無い。
それが当然とばかりに後続と何やらやり取りをしている。
――華雄が片手であしらわれたって話、ほんまやったんやな。
華雄の事は彼女が未熟だった頃から知っている。
未熟と言っても華雄の武力は本物だった、でなければ将まで出世できないだろうし。
実際に董卓軍内で彼女と互角以上に戦えるのは張遼だけだ。
武に対する過剰な自信が玉に瑕だったが、それも踏まえて一目置いていた。
だからこそ彼女が手も足も出ない武人が居る事に耳を疑い、半信半疑だったのだ。
その疑惑は、前方に居る怪物に晴らされたが……
「急報! 側面か
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