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銀河英雄伝説 アンドロイド達が見た魔術師
人形葬
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す。
 お父様の言葉を再現しましょう」

 そう言って、メモリーから人形師の言葉を再生する。
 さすがに女性形アンドロイドから男性の声が出るのは真面目なシーンに合わないのでレコーダーから聞かせたが。

「何よりも素晴らしいのは、この犠牲に同盟市民の血はほとんど流れないって事さ」

 国家の国家たる下衆さ全開の台詞にヤンの怒りは頂点に達して、かえって頭が冷める。
 これだけの復讐心を秘めながら、実際の730年マフィアが行った政策はフェザーン融和政策だったのだから。
 そして気づいてしまう。
 ド・ヴィリエ大主教が緑髪の政策秘書から聞かされたそれを。

「そうか。
 まずは、裏で動くフェザーンを舞台にあげる必要があったのか。
 それに三十年以上かけて。
 そこまでする必要はあるのですか?」

「ないですよ」

 想定外の全否定を聞いてヤンの手からファイルが落ちる。
 今までの流れは何だったんだと必死に心を落ち着かせるヤンを知らずにマザーはあっさりと前提をバラす。

「あくまでこれは、『お父様のお宝』ですから。
 見つけた人が好きにすればいいと思います」

 そう。
 あくまで、実行されなければ妄想で終わる案なのだ。
 だが、実行できる環境が整い、それによって三十億の犠牲と数十年の平和という形で天秤に物が乗せられている。
 そして、それをどう判断するかを人形師が見込んだ英雄であるヤンに任せたのだ。

「という事は、実行しなくてもいいと?」

「構いません。
 ですが、その場合第三国であるフェザーンをめぐって同盟市民の血が流れる事態となり、同盟政府はそのコストに耐え切れないでしょう。
 政府が行っている工作そのものは間違ってはないなのですよ。
 その工作における、最もローコストでハイリターンを入手できる作戦案であるというだけで」

 だからこそ、ヤンがこの作戦を行わない事を前提に、マザーコンピューターはヤンの心に釘を刺した。
 やってもやらなくても地獄に彼を突き落とす。

「彼らを救いたいのならば、フェザーンを完全に同盟に併合して下さい。
 そうしないと、同盟は最終的にフェザーンを見捨てるでしょう」
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