人形葬
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。
あくまで式典用アンドロイドの一体を借りてだが、その実態は最高機密の一つであるマザーコンピューターのメインプログラムだったりするのを知っている人間は少ない。
ヤンは彼女の演説を聞きながら、ため息をつく。
彼はその知っている人間の一人であり、その彼女から面会を求められていたのだから。
式典は淡々と進んだ。
空の墓に形見として同じDNAで作られた緑髪を燃やしてその灰を墓にふりまく事で葬式そのものは終わるからだ。
だが、葬式という物の本質は生きている人間のためにあるのは周知の事実だ。
一つは、残った人間が去った人間との別れを告げるため。
もう一つは、去った人間をだしにして、残った人間に合うため。
「おかけになってくださいな。
ヤン准将。
貴方のことは、いつも噂になっていますのよ」
式典の貴賓室に居るのは、人間ではヤンしか居ない。
緑髪の副官に、戦艦セントルシアの実体化AIからやってきたアンドロイドに、最新鋭フラグシップ機『ホライゾン』タイプの緑髪メイド達が控える中で先ほどとは姿が違うマザーコンピューターはヤンに語りかける。
「なるほど。
木を隠すには森のなかですか」
「ここまで私達が広がると、この方がばれないのですよ。
このタイプは見かけは同じですけど、統括用機で『エンプレス』とお父様は名づけてくださいました」
同盟内部にいくつあるか知らない分からない超最高機密をあっさりとバラす事で、ヤンは己の逃げ道が塞がれた事を悟った。
そして、どの地雷を踏んだのかヤンには心当たりがあったのである。
「人形師のお宝ですか」
「ご明察。
そのお宝を正式に開示する為にあなたに来ていただきました」
もちろんこれはマザーの嘘だ。
ラインハルトの脅威を認めた以上、ヤンに偉くなってもらわないと困るのだ。
そうでないと、彼女が父である人形師に与えられた唯一絶対のラストオーダーである、
「銀河をひっかき回せ」
が遂行できなくのだから。
もちろん、そんな事をおくびにも出さずに彼女は書類がまとめられたファイルをヤンに差し出した。
「これが本当のお父様の遺産です。
正式な手順を全部踏んである命令書で、出す所に出せば、ちゃんと命令が実行できますよ」
作戦立案者は人形師。
賛同者に730年マフィアの面々のサインが並んでいるそれを読んでいたヤンの顔色が変わる。
青白くなりファイルに汗が垂れるのに気にせず、ヤンはそれを見続ける。いや、固まったままでいる。
その答えが出るのは、ヤンがお父さまが見込んだ英雄だからとマザーコンピューターはやっと確信する。
「そういう事ですか。
アッシュビー提督はフェザーンに殺されたんですね」
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