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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第九話 俺と、私にできること 前編
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ういう世界だよな」
魔法がないということは、魔法が関わることなんて起きないということ。
魔法が原因で苦しむ人も、悲しむ人も、何かに耐える人もいないはずの世界。
「なのに、なんだよ……これは」
声から、怒りの感情が漏れ出す。
左手を力いっぱいに握り締め、手すりに殴りつける。
微かに凹んだ手すりを見つめながら、俺はいう。
「なんで、苦しんでいる人がいるんだよ」
ジュエルシード一つをきっかけに、俺は出会った。
その小さく、細い身体一つでジュエルシードを求める少女に。
その小さく、細い身体一つで俺たちに立ち向かおうとした少女に。
一体どれだけの決意が必要だっただろうか。
一体どれだけの苦痛が必要だっただろうか。
たった9歳の女の子には、あまりにも重すぎる荷物だ。
無言、無表情を貫いてまで隠し通そうとした犯人がいる。
自分一人が罰を受ければ良いと思えるような誰か。
「彼女は父母、どちらが好きかの問いに、母と言った瞬間にだけ大きな反応を見せた」
それこそ父は知らないというほど零の反応だったのに対し、母には百で返したように。
そして、分かった。
「彼女の母親が、彼女にジュエルシードの回収を命令したんだっ!」
拳に込められる力が強くなる。
下唇を噛み締めると、血の味が広がる。
強い感情が胸から湧き上がるあまり、目眩までしてきた。
これは間違いなく、怒りだ。
「大事な家族に、なんてことやらせてるんだよ」
まだ、親に甘えたい時期だろ。
まだ、親に甘えていい時期だろ。
なのになんでだ。
なんで、彼女を一人にする。
なんで、彼女に罪を背負わせる。
なんで、彼女が傷ついているのに心配しない。
「……女の子ばかり、頑張らせるわけにはいかないよな」
ため息混じりに、言葉を漏らした。
怒りが俺に、一つの決意を抱かせたから。
ジュエルシード一つに、巻き込まれた少女がいる。
本来なら関わる必要ない人ばかりが、巻き込まれていく。
そんな状況を、黙って見ているわけにはいかない。
それに……何より――――、
「――――女の子だけに任せるのは、男としてダサいよな」
この世界出身の女の子。
五年ぶりに再会した女の子。
母親に利用されている女の子。
皆には、平穏で平和な日々を送って欲しいし、そうあるべきだ。
ならば男の俺にできることは決まってる。
「ジュエルシードは必ず集めきる。 そして、あの子の母親とも決着をつける」
明確な敵を理解した。
この怒りのぶつけ所
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