第一章
[2]次話
過ぎ去ったもの
エジプト軍はこの時勝利を確信していた、それでだ。
ファラオもだ、大臣達にこう言った。
「勝利の祝いの用意は出来ているな」
「はい、軍が帰ればです」
「何時でも祝えます」
「それが出来ます」
「それも大掛かりなものが」
「そうだな、ではだ」
ファラオは大臣達の言葉にだ、満足して言った。
「彼等が戻るのを待とう」
「敵のアッシリア軍は我等の三分の一です」
「その程度の数です」
「ですから負ける筈がありません」
「しかも我等は戦車をです」
馬が引いた車だ、チャリオットという。
「今回は多数持って来ています」
「それに弓矢も充実しています」
「兵達の鎧もいいものばかりです」
「剣も新しいものを多数装備させています」
「勝ちます」
「負ける筈がありません」
「そうだな」
ファラオも確かな声で頷く。
「我々は吉報を待つだけだ」
「近頃アッシリアは随分と威勢がいいですが」
「三倍の敵には勝てません」
「ましてや戦車も武具も充実しているのです」
「兵糧も多く持って行っています」
「負ける要素はありません」
それこそ何一つとして、というのだ。
「では我等はです」
「吉報を待ちましょう」
「我が軍の勝利を」
「凱旋の準備も進めています」
まだ戦う前であるがだ、既にだ。
彼等は勝利を確信していた、エジプト軍が負ける筈がないというのだ。
それは軍も同じだった、兵士達は進軍しつつ明るく言っていた。
「今回の敵は少ないらしいな」
「我々の三分の一位らしいな」
「三倍だとな」
「負ける筈がない」
こう言うのだった、彼等も。
「ましてこちらは戦車も多い」
「今回はこれでもと持って来たからな」
「しかも弓矢も多いぞ」
「剣も武具もいいものばかりだ」
「兵糧もたっぷりある」
「それでどうして負けるんだ」
「今回は勝つぞ」
「絶対にな」
彼等も確信していた、自分達の勝利を。そう思いつつ進軍していた。
彼等を率いるラムセスもだ、初老の日に焼けた顔をメソポタミアの大地に見せながらだった。士官達に言っていた。
「勝つ」
「勝てるのではなく」
「勝ちますね」
「絶対に」
「そうなりますね」
「油断大敵だが」
それは禁物であるがというのだ。
「しかしだ」
「兵力は三倍」
「装備も充実しています」
「特に戦車が多いです」
「兵糧もありますし」
「水も確保しています」
まさに万全の状況だというのだ。
「これで負けるか」
「敗れる道理はありません」
「それこそ何一つとしてです」
「それはありません」
「その通りだ、後は油断せず陣形を整えてだ」
そのうえでとだ、ラムセスは士官達に答えた。
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