第二章
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「それをそう言っているだけのことだ」
「それが教授の考えだね」
「それが現実だ」
「じゃああたしも現実を言うよ」
おばさんは必死の大藪に対して余裕綽々の態度で返した。
「教授が店の中で大騒ぎすると迷惑だからね」
「迷惑?」
「本屋の中では静かにだよ」
おばさんが今度出した現実はこれだった。
「エチケットは守らないとね」
「だからか」
「そうしたことは研究室か講堂で言ってくれよ」
実にクールな返事だった。
「だからいいね」
「それでか」
「そうさ、買わないなら帰ってくれよ」
「これを買う」
学術書を何冊も出して言う大藪だった、心霊写真の本はちゃんと元の場所に戻して。そして店を静かに去るのだが。
おばさんはその彼の後ろ姿を見送ってだ、やれやれといった顔でカウンターに来た自分の亭主この本屋の店長に言った。
「まただったよ」
「ああ、大藪教授かい」
「騒いでたよ」
「あの人も相変わらずだね」
亭主もやれやれといった顔である、おばさんは痩せているがこちらは丸々と太っている。
「騒がしい人だね」
「言えば大人しくなるんだけれどね」
「悪い人じゃなくてね」
二人もこう言うのだった。
「それでね」
「ああ、それでもな」
「変わってるっていうか」
「ちょっとな」
「ああした人だからね」
「また騒いだんだな」
「そうなんだよ」
それで、というのだ。
「何とか大人しくしてもらったよ」
「今回もか」
「まあ騒ぐだけの人だからね」
「その点はやりやすいな」
「まだね」
暴れてものを壊したりする人間ではないからというのだ。
「いいんだよ」
「そうだね、けれどね」
「ああ、ああした人だからね」
「この店以外の場所でも騒いでるからな」
「困った人だよ」
「そうだよな」
こう話していた、店の中で。そして実際にだ。
大藪は大学のあちこちで力説していた、オカルト研究会やUFO研究会に乗り込んでとかく大声で騒いでいた。
そしてその都度部室なのでと退散させられているのだが。
学生達もだ、やれやれといった顔で言うのだった。
「雨が降った様なものにしてもな」
「時々来て騒ぐからな」
「困った人だよ」
「帰ってくれって言ったら帰って」
「活動の邪魔はしないけれどな」
騒ぐだけでだ。
「何かな」
「つくづくあれな人だな」
「何ていうかな」
「あの人はあの人で非科学的だな」
「そうそう、科学現実って言うけれど」
それこそ常にだ。
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