第一章
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宇宙人はいない
某大学の教授大藪義彦氏はかなりの変人として知られている。工学部の教授であり工学博士である。だが。
その変人ぶりは際立っていてだ、とかくムキになって主張していた。
「幽霊なんているか!」
「妖怪もいない!」
「人魂は自然現象だ!」
「心霊現象はただの科学現象だ!」
「宇宙人もいない!」
こう力説する、だが。
その彼をだ、大学の者達は苦笑いで見て言っていた。
「そうした人だから」
「そうそう」
「悪い人じゃないけれど」
こうした時に出る言葉の定番だ、確かに大藪は悪人ではない。地位を振りかざすことも意地悪なこともしない。
だがそれでもだ、こう言われるのだった。
「無茶苦茶っていうか」
「言ってることが」
「感情的過ぎて」
「学術的じゃないこと多いな」
「何でもかんでも現実を見ろで」
「自然現象、科学現象でな」
そうした言葉をムキになって出してなのだ。
「今現在のそうした知識で」
「言うからな」
「もうあそこまでいくと」
それこそというのだ。
「非常識だよな」
「電波っていうか」
「工学博士なのに科学的じゃないよな」
「オカルト否定するのはわかるにしても」
その否定の仕方が問題だというのだ。
しかし大藪は人の話を聞かない、それで大学でも大学の中で本屋のおばさんに文句をそれもムキになって言っていた。
「いいかね、心霊現象はね」
「はいはい、あれだよね」
やや太って眼鏡に七三分けの黒髪にスーツという外見だけは理知的に見えなくもない大藪にだ、おばさんは返した。
「非科学的で」
「嘘なんだ」
「だからっていうんだね」
「こんなのを本屋に置くんじゃない」
こう言うのだった。
「これは嘘だ」
「教授はそう思ってるんだよね」
「いいかね、大学は現実そして正しいことを学ぶ場所で」
「こうした本を置くと」
「嘘を信じる人が出るじゃないか」
その心霊現象の本をおばさんに見せながら言っていく。
「貴女はその時の責任を持てるのか」
「持つも何もね」
「何も。何だっていうんだ」
「好きな人がいるからね」
おばさんは痩せた身体で腕を組んで言った、殆ど白くなっている髪の毛がその痩せた身体に実によく似合っている。
「買うんだよ」
「好きも何もだ」
「教授、世の中需要と供給だよ」
おばさんもまた現実を出した。
「それで嘘とわかってて喜ぶ人もいるじゃないか」
「そんなひねくれた楽しみ方は邪道だ」
まっすぐしか知らない大藪から見ればだ。
「あってはならない」
「だからだっていうんだね」
「嘘を書いた本を置くんじゃない」
「じゃあ教授は幽霊を見たことがあるのかい?」
「見たことはないがわかっている」
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