第四章
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「私は君には何もしない」
「左様ですか」
「私に反逆するでもなくナチズムの根幹を否定するのでもないkなら、それにだ」
ここでもだ、ヒトラーは博士にこう告げた。
「君は我が国に必要だからな」
「それで、ですか」
「私は君には何もしない、そのことは固く約束する」
権謀術策にも長け欧州各国から世界一の虚言家と言われているがというのだ。
「私はな、しかしだ」
「ヒムラー長官はですか」
「彼はこれからも君を狙う、それこそフルトヴェングラー博士に対する様にな」
「あの方もですか」
ドイツを代表する指揮者だ、博士も彼のことは知っている。畑が違うがだ。
「長官に狙われていますか」
「そうだ、だが私は君も彼も害するつもりはない」
「しかし長官にはですね」
「注意することだ、次は君を助けられるとは限らない」
「では」
「自分の身は自分で守ることだ、いいな」
「わかりました」
博士はヒトラーに確かな声で応えた、そしてだった。
彼は以後周辺に気を使い研究を続けた。しかし。
ドイツの状況が悪化するにつれてだ、それと共に。
ヒムラーはゲシュタポを使って彼と彼と共に研究する科学者達への監視の目を強めていた。そしてだった。
同志の一人がだ、博士のところに来て言った。
「博士、遂にです」
「ゲシュタポがか」
「博士も我々もです」
「逮捕してか」
「そしてです」
「そうか、わかった」
博士は彼に強い声で応えた、そのうえで。
彼にだ、すぐに告げた。
「祖国を捨てることになるが」
「それでもですね」
「私は研究を続けたい」
「そしてですね」
「必ずだ」
こう言うのだった。
「人を月まで送る」
「ロケットで」
「そうする、だからここはだ」
「亡命されますか」
「君達も来るね」
博士は彼の目を見据えて問うた。
「私と一緒に」
「はい、そうさせて頂きます」
彼もだ、博士に確かな声で答えた。
「私も博士と同じ考えです、それに」
「命がだね」
「死にたくないですし」
「生きていれば」
「何かが出来ますし最後の審判を受けるにも」
キリストによってだ、キリスト教の考えも出た。
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