7部分:第七章
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たんでしょ?」
岩田さんは浩太にまた問うてきた。
「その人」
「だから気になってるんだよ」
浩太は岩田さんを探りながら言ってきた。
「誰なんだろって」
「そうね。じゃあ探してみたら」
勘繰ると何か白々しい言葉に聞こえる。しかし岩田さんはそれも見せはしない。
「じっくりとね」
「じゃあそうしようかな」
一旦間合いを離すことにした。武道の要領だ。
「それじゃあ」
「そうね。それで探して見つかったら」
「うん」
「その人に告白してみせたらいいわ」
岩田さんは空を見上げて言う。わざと浩太と目を合わせないようにしているようであった。
「どう、それで」
「面白いね」
浩太もそれを聞いて笑みを浮かべた。悪い気はしない。
「じゃあそれでいかせてもらうよ」
「そうしたらいいわ。それにしても」
「何だい?」
彼女が言葉の調子を変えてきたのに気付いた。
「楽しかった?今年のバレンタイン」
「それはね」
勝負のおかげで随分楽しかった。それも事実だった。
「かなりよかったよ」
にこりと笑って答える。本当にそう思える。
「おかげさまでね」
「そう。よかったわ」
二人はここではわかっていた。だがあえてわからないふりをしてやり取りをしているのであった。これもまた駆け引きの一つであった。
「それでも次は」
「次は?」
「このチョコレートをくれた人に堂々と渡してもらいたいね」
「そう。だったら見つけないとね」
「今度の勝負はそれかな」
浩太はぽつりと呟いた。
「次のバレンタインにまではね」
「頑張ってね」
「うん」
顔を見合わせて言い合う。こうして次のバレンタインまでの勝負が今はじまったのであった。二人は今その戦いを楽しもうとしていた。
バレンタインは社交辞令!? 完
2007・1・1
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