第一章
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宇宙へ
ヴェルナー=マグヌス=マクシミリアン=フライヘル=フォン=ブラウン男爵は常にだ、周りにこう言っていた。
「人は必ずだよ」
「月にまで、ですね」
「ロケットを打ち上げられますか」
「宇宙にロケットを」
「行かせることは出来ますか」
「そう、出来るんだよ」
彼は強い声で言うのだった。
「私はそう信じている」
「しかし男爵」
「博士と呼んでくれるかな」
すぐにだ、こう訂正させるのだった。
「そこは」
「博士ですね」
「うん、そう呼んでくれるかな」
「わかりました、では博士」
「それではね」
「この地球はです」
こう言うのだった、周りは。
「空洞であり」
「氷の中にあります」
「それがナチスの主張です」
「そうなっていますが」
「そう言われているがね」
それでもと言う博士だった。
「違うよ」
「現実はですか」
「違いますか」
「地球は宇宙の中にある」
「そうだというんですね」
「そう、だから月にまでだよ」
博士は目を輝かせて話した。
「人はロケットを飛ばせる」
「そうなりますか」
「何時かは」
「そう、私は信じている。いや」
博士はここで言葉を訂正させた。
「確信しているよ」
「必ず、ですね」
「それは」
「そう、人は必ず行ける」
そして言うことはというよ。
「ドリトル先生みたいにね」
「イギリス、いえアメリカでしたね」
「あの小説家は」
「そうだね、イギリス生まれでね」
「それはまずいです」
一人が博士に曇った顔で忠告した。
「イギリスやアメリカの作家の名前を出すこと自体が」
「敵だからこそ」
「はい、お気をつけ下さい」
くれぐれもという口調での言葉だった。
「ゲシュタポの目は何処にでもあります」
「そして目をつけられると」
「そもそも月までロケットを飛ばしてです」
そのうえでというのだ。
「人をやるというお話自体も」
「ナチスの主張を否定している」
「そう捉えられます」
そのゲシュタポにというのだ。
「連中は洒落になりませんから」
「バチカンの下の異端審問の様に」
「様にじゃなくてそのものです」
ゲシュタポ、彼等はというのだ。
「現代の異端審問です」
「だから私も下手なことを言えば」
「命が危ないです」
真剣な顔でだ、彼は博士に忠告した。
「宇宙は巨大な氷で地球はその中にあることを否定することも」
「イギリスやアメリカの作家の名前を出すことも」
「そうです、本当にお気をつけ下さい」
博士自身の為にというのだ。
「実際に博士は長官に睨まれています」
「ヒムラー長官にだね」
「あの方の権限は絶大です」
ナチス=ドイツにおいてというの
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