第六章
[8]前話
ハイドリヒはすぐに病院に入れられた、病院は他の患者を無理に他の病院に出して彼専用の治療の場所になった、ヒトラーの命令で。
だがその話を聞いてだ、ヒムラーは目を光らせて側近達に問うた。
「どう思うか」
「はい、まさにです」
「千載一遇の好機です」
「あの方が入院している」
「では」
「しかもあの病院はだ」
ハイドリヒが入院している病院はというのだ。
「ナチスの者と医師ばかりだ」
「はい、医師ならです」
「我々も持っています」
「そしてあの病院にも親衛隊の者なら出入り出来ます」
「我々と縁のある医師も」
「この機会を逃せば」
ヒムラーはその顔に危惧を出して言った。
「もうないかも知れないな」
「では」
「動かれますか」
「君達と同じ考えだ」
これがヒムラーの返答だった、そしてハイドリヒは襲撃されてから一週間後にだ。少なくとも襲撃された直後は反撃で拳銃を放つ余力がありだ。
回復に向かっていた医師もいた、だが彼は死んだ。ヒトラーは彼の死を悼み多くの容疑者を処刑したが彼は戻らなかった。
このことについてだ、ヒムラーは安堵して言った。
「よかったな」
「はい、本当にです」
「あれだけ危険な方がいなくなると」
「安心出来ます」
「確かに優秀な方でしたが」
「あまりにも危険でした」
「我々にとっても」
「まさに悪魔だった」
ヒムラーは死んだ彼をこう評した。
「金髪のな」
「我々はナチスの裏ですが」
「裏の仕事を受け持っていますが」
「その中でもです」
「恐ろしい方でした」
「あそこまで恐ろしいとだ」
それこそというのだ、ヒムラーですら。
「我々もどうしようもなかった」
「全くです」
「いなくなりここまで安心出来るとは」
「正直想像もしていませんでした」
「実にな、優れた部下だったが」
ヒムラーはこうは言ったがだ、その顔も声も傷むものではなかった。
「それ以上に恐ろしい男だった」
「同じナチスですが」
「それでも」
部下達も言うのだった、彼等の中の誰一人として彼の死を残念には思っていなかった。
ラインハルト=トリスタン=オイゲン=ハイドリヒの死についてはヒムラーが止めを刺したという説が根強い、だがその真相はわからない。それでもヒムラーも他のナチスの者達も彼を心底恐れていたことは確かだ。このあまりにも危険な男を。そしてその死は敵である連合国の面々だけでなく味方である筈も彼等も喜んだ。悪魔の死として。
悪魔の死 完
2015・12・18
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