第五章
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「そうした男だからな」
「では」
「このままでは長官も我々も」
「危ういですか」
「全くだ、どうすればいいのか」
ヒムラーも彼の側近達もだ、自分達の将来に危惧を覚えていた。ハイドリヒがこれまで以上の権勢を握り地位を高めていくことに。
だがその彼についてだ、連合軍側も危険視していた。ナチス政権内における屈指の切れ者であり弾圧と虐殺の担い手としてだ。
それでだ、イギリスの首相チャーチルは彼がベーメン=レーメンにいると聞いて部下達に言った。
「好機かもな」
「あの危険な男を消す」
「その、ですね」
「ベルリンにいては手を出せない」
そこはナチスの心臓だ、空襲は仕掛けられてもハイドリヒ自身を狙うことは出来ない。
「工作員を忍び込ませることすらだ」
「ベルリンはおろかドイツ本土には」
「不可能です」
「そうだ、しかしだ」
それでもというのだ。
「あの場所ならばだ」
「ドイツ領とはいえ元々チェコです」
「あの国の領土だったので」
「まだ何とかなりますね」
工作員を送ることをというのだ。
「レジスタンスもいますし」
「ではこの機会にですか」
「あの男を狙いますか」
「そうしますか」
「あの男はヒムラーと同じか彼以上に危険だ」
チャーチルは真剣そのものの顔で言った。
「まさにナチスを具現化した様な男だ」
「ただ切れるだけでなく」
「極めて冷酷で残忍です」
「倫理観は見られません」
「まさにナチスの具現化です」
「あの男はヒトラーの後継者になれる」
こうまで言うのだった、チャーチルも。
「ここで消しておかないとだ」
「若しこの戦争でナチスが生き残り」
「ヒトラーの後継者にあの男がなれば」
「ヒトラーと同じだけ厄介ですね」
「我々は危険な男と対し続けることになります」
「そうなっては笑いごとではない」
到底、とだ。チャーチルは葉巻を出しながら言った。
「ここはやるべきかもな」
「では」
「あの場所に工作員を送り」
「レジスタンスと協力してですか」
「あの男を消しますか」
「そうしよう」
こうしてだった、チャーチルはハイドリヒを消す為にレーメン=ベーメンに工作員達を送り込んだ。そしてオープンカーを部下に運転させて街を移動させている長身で細身の彼をだ。
攻撃させた、だがハイドリヒは立ち上がり持っていた拳銃で反撃する程の体力が残っていた。これを見て工作員達は舌打ちした。
「しくじったか」
「あの男悪運もあるのか」
「これで終わったと思ったが」
「まだ充分な力があるぞ」
傷を負ってもそうしている彼を見て言うのだった。
「あのまま治療を受けるとな」
「回復するぞ」
「これは失敗した」
「残念だ」
こう口々に言ってだ、彼等はその場を後にしてチャー
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