第四章
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その中でだ、ヒトラーはハイドリヒをベーメン=メーレン保護領副総督に任命した。保安本部長等の彼のあらゆる職責を留任させたままで。
そしてそこでだ、彼は。
飴と鞭を使い分ける悪魔的なまでの統治を行いその地を完全にナチスのものにしていった。ヒムラーはこのことにも苦い顔をした。
「思っていた通りだ」
「はい、政治家としてです」
「やはりあの方は天才です」
「弾圧と懐柔を巧みに使い分け」
「そのうえで治めています」
「あの地は収まる」
ベーメン=レーメンはとだ、ヒムラーは断言した。
「確実にな」
「そして、ですね」
「あの方はさらに功績を挙げられたので」
「それで、ですね」
「これまで以上に」
「親衛隊の副隊長か」
ヒムラーは忌々しげに言った。
「私のすぐ傍だ」
「そして、ですね」
「そこからですね」
「いよいよ」
「何も出来ない」
打つ手がないというのだ。
「ずっとな」
「ここまで機会がないとは」
「当然打つ手段がないですし」
「どうにもならないですね」
「彼は自分の手が届く範囲に私の首があればだ」
その時は、というのだ。
「平然と私の首を切って来る」
「はい、そうしてです」
「これまでのし上がってこられた方ですし」
「それならば」
「確実にそうしてこられますね」
「彼は忠誠心や友情はない」
そうした感情はというのだ。
「そういうものにはだ」
「何の価値もですね」
「見出しておられないですね」
「権力欲と野心だ」
彼にあるものはというのだ。
「そうしたものしかない」
「そうした意味でも実に恐ろしい方です」
「同じ人間とは思えないまでに」
「だから何とかしたいですが」
「我々としても」
「しかし何も出来ない、このままではだ」
ヒムラーは今回もだ、側近達に言った。
「私も君達もだ」
「はい、あの方によって」
「この首がなくなります」
「そうなります」
「君達が彼に必要ないとみなされればだ」
そのハイドリヒにというのだ。
「終わりだ」
「その場で、ですね」
「切り捨てられますね」
「何の迷いもなく」
「彼は部下の失敗を許さない」
部下にも恐ろしい男なのだ。
「失敗すれば即無能とみなされてだ」
「切り捨てられますね」
「容赦なく」
「私でもしない様なことを平然とやる」
こう言うのだった。
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