第二章
[8]前話 [2]次話
「このままでは私の座が危うい」
「ではどうされますか」
「ここは」
「何かしたいが」
それでもというのだった。
「今はな」
「一応カードはありますね」
「それは」
「あれだな、彼の母の再婚相手だが」
ヒムラーは側近達の言葉に曇った顔で返した。
「ユダヤ系という噂だな」
「それがありますが」
「あの方については」
「ご本人も気にしておられる様ですし」
「そちらは」
「再婚相手だ」
ヒムラーは曇った顔で指摘した。
「母のだ、だからだ」
「はい、血のつながりはないです」
「どう強引に言いましても」
「そのことは我々でもです」
「強引に言いつくろうことすら出来ません」
「しかも実はユダヤ系ではない」
ヒムラーは不機嫌な顔で側近達にこのことをはっきりと言った。
「名前がそう思わせるだけだ」
「実際はですね」
「その再婚相手もユダヤ系ではない」
「ただ名前がそうした風なだけで」
「カードとしてあっても」
「それは」
「使えたものではない、そしてだ」
ここでだ、ヒムラーは。
側近達にだ、忠告する顔でこう言った。
「このカードは彼に下手に出すな」
「決してですね」
「そうしてはなりませんね」
「彼は気にしている」
このカードにならないカードをというのだ、それを切られる側としては。
「下手に使って彼を刺激するとだ」
「逆に我々がですね」
「あの方に消される」
「そうなりますね」
「言っておく、彼は自分に仕掛けてきた相手ならだ」
それこそというのだ。
「容赦なく消す」
「あらゆる謀略を使い」
「そのうえで」
「謀略で彼に勝てる者はいない」
ヒムラーは側近達に強く忠告するのだった。
「私も無理だ」
「長官でもですか」
「あの方の謀略に対することは」
「死にたくなければこのカードは使うな」
「カードにもならず」
「逆にあの方を刺激するだけだから」
「そうだ、だからだ」
そのカードも使えない、それ故にというのだ。
「彼についてはどうしようもない」
「あのままですか」
「手出し出来ずに」
「このまま放っておく」
「それしかないですか」
「非常手段もだ」
それが何かはあえて言わないヒムラーだった。
「それもだ」
「使えませんか」
「そちらも」
「彼はフェンシングの達人だ」
日々鍛錬を欠かしていない、オリンピックの選手だったこともある。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ