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バレンタインは社交辞令!?
3部分:第三章
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「ちょっと前まで立場は全然逆だったのになあ」
 浩太はまたぼやく。
「あれだけ弱かったのに」
「ヤクルトに凄い負けてたわよね」
「そうだったね。巨人投手陣にも」
「私の子供の頃の阪神の試合ってね」
「うん」
 話は岩田さんの子供の頃に移る。
「いっつも阪神打線がカープのピッチャーに捻られていたのよ」
「こっちも。マシンガン打線にね」
 阪神の打線は打てなかった。絶望的なまでに打てなかった。そしてピッチャーは優勝チームの打線に打ち崩されていく。それが凄く絵になっていた。何故かヤクルトには毎年負けまくっていた。勝つ方がずっと少なかった。そうしたチームであったのだ。今は昔のことだが。
「それがねえ」
 岩田さんがぼやく。
「それを思うと本当にチョコレートでよかったじゃない」
「そうだね」
 浩太は彼女の言葉に頷く。
「本当にそう思うよ」
「そうでしょ?」
 今の季節は野球はない。しかし二人はそのことで話を盛り上がらせながら夜道を歩いている。あまりバレンタインの話はしないがそれでも言葉の中にはちゃんと出ていたのである。
「それで僕が勝てると思う?」
「どうかしらね」
 岩田さんは浩太のその問いには首を傾げてみせてきた。
「微妙ね」
「微妙なの」
「だって。義理チョコばかりなんでしょ」
「うん」
 浩太はその問いに答える。
「そうだよ」
「だったら絶対同じ数になるわよ」
 岩田さんは言う。
「義理チョコはあくまで義理なんだからまんべんなく配るものだし」
「そうだよね」
 浩太もその言葉に納得する。


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