2部分:第二章
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」
「またそれ?」
「だってそうじゃない」
彼は答える。
「実際にそんな歳じゃないじゃない。好きな女の子からチョコレートを貰ったり好きな男の子にあげたりするみたいな。そうじゃない?」
「夢がないわね」
そのえくぼを少し歪めさせて岩田さんは言ってきた。
「そんなんだと面白くないわよ」
「別に面白いことを言うつもりもないしさ」
浩太はそのえくぼに対して言葉を返す。
「本当じゃない。そういうことは何時でもできるし」
「それを言ったらバレンタインだってそうよ」
岩田さんは浩太のその言葉にこう返してきた。
「そうじゃないの?」
「それはそうだけれど」
何か浩太の方が劣勢になっていた。彼もそれを感じていた。
「けれど」
「私はね」
「うん」
ここで岩田さんが話を出してきた。
「こういうことは幾つになっても同じだと思うわよ」
「そうかな」
「そうよ」
お決まりの言葉が返ってきた。
「少なくとも女の子はね。そうよ」
「女の子、ねえ」
ちらりと岩田さんを見る。実は浩太と彼女は同期で同じ歳である。結果として卓を入れて三人は同期になるのである。
「女の子は幾つになっても女の子よ」
岩田さんはそう説明する。
「そういうものなのよ」
「そうなんだ」
「だからよ」
そしてまた言う。
「幾つになってもね。やっぱり」
「好きな人にあげたいの?」
「それは人それぞれだけれどね」
浩太の言葉にははぐらかしで応えてきた。浩太はそれがどうしてかまではここでは考えはしなかった。
「まあそうかもね」
こう述べただけであった。それですぐに忘れてしまうようなものであった。
「だからね」
しかし岩田さんはまだ言う。浩太の思惑を越えて。
「ひょっとしたらよ」
「ひょっとしたらだね」
「誰かがチョコレートの本命を入れていて」
「それであいつに勝つってこと?」
「勿論向こうにもそういう可能性はあるけれど」
「どうだろうね」
浩太はこの言葉には苦笑いを浮かべて首を捻ってきた。二重に懐疑的な仕草を示してきた。
「まあ可能性はゼロじゃないか」
「わかったかしら」
「期待はしていないよ」
それでも彼の言葉は変わりはしない。変えるつもりもなかった。
「どうせ引き分けに決まってるさ」
「夢がないわね」
「こんなことで夢を見てもね」
苦笑いを浮かべたまま言った。
「あまり何もないし」
「じゃあ何に夢を持つのよ」
岩田さんもその声をむっとさせて彼に尋ねてきた。暗い夜道に二人の声が響く。擦れ違う人の多くが赤い顔をしている。それを見ていると何かバレンタイン前とは思えないいつもの日常であった。
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