音怪-後編-
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か。この系統の噂にはよくあるから仕方ない。
「詠月さん詠月さん。そろそろ向かったほうが良いと思います」
後ろから袖がチョンチョンと引かれた。振り返ると本を抱えた結月が立っていた。
「もうそんな時間か。その本借りるのか?」
「はい、続きが気になりますし」
結月がカウンターに本をのせる。委員長はそれを取ると素早くバーコードを通し、貸出手続きをすませ、結月に渡した。
「それじゃおれたちは行くから。またな委員長」
「さようなら遥風さん」
「ええ、おふたりとも、また明日」
PM17:40 詠月家
「四年か……」
久しぶりに実家の前に立った。なんだかんだ言ってここの前に立つと、帰ってきたという感覚を抱く。やっぱり自分の実家だからだろう。
「お父さんはまだ帰ってきてませんね。先に上がっておきましょう」
結月を先頭に玄関に向かう。結月が鍵を鍵穴に差し込み、回そうとした時、彼女の手が止まった。
「どうした?」
「鍵が……開いてます」
「?別に普通じゃないか。お前のお母さんだって」
「お母さんは今日は夜勤で遅いんです。だから、家には誰も」
その事を聞いてことの重大さにやっと気づいた。誰か、俺達の知り得ない誰かがこの家に侵入している可能性がある。俺は結月の前に立ち、先に行くと伝えた。結月もそれに頷き返し、俺の後ろに下がる。玄関を開けようと、ドアノブに手をかけようとした時、服の裾が結月に掴まれていたことに気づいた。その手が小刻みに震えている。当然か、家に知らない奴が居るかもしれないんだから。
(よし、頑張れ俺!)
自分に発破をかけると、静かに玄関を開ける。中は電気がついておらず、真っ暗だ。慎重に廊下を進み、まずはリビング。なんとか覚えていた電気のスイッチを押し、明かりをつける。しかしリビングには誰もおらず、何も荒らされてはいなかった。次に書斎、風呂場、トイレ、キッチンを探したが何か変わった様子はないと、結月は言った。
「お母さんが鍵を閉め忘れたのかな」
「そうなのかもな。でも安心はできないし、警察に」
その時だった。二階から何か物音が聞こえた。結月もそれに気づいたのか、少し焦ったようにこちらを見ている。俺は近くにあった箒を手にとった。本当に空き巣だった場合はこんなもので対抗できるかは分からないが、結月が逃げる隙程度は稼げるだろう。リビングを出て二階に上がる。二階の廊下も真っ暗だったが、一つだけ下の階とは、違うところがあった。
(詠月さん、私の部屋から明かりが)
(ああ、もし本当に空き巣だったら一目散に逃げて、マキの家にいけ。場所はわかるな?)
小声で聞くと、結月は静かに頷いた。それを確認すると、一歩一歩、慎重に進んでいく。扉から少
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