第四章
[8]前話
「バンシーですね」
「同じですね」
「ナイチンゲールも」
「あの鳥も」
「不思議な話です」
再びだ、教授は瞑目した。
「妖精の様な、ですが」
「それでもですか」
「不思議でも」
「それは現実のことですね」
教授が今言うのはこのことだった。
「不思議な話が実際にある」
「このアイルランドでは」
「そうかも知れませんね」
「この国は本当に不思議な国です」
教授は静かに言った。
「妖精がいると言われ現実に妖精の様なことが起こる」
「まさにですね」
「そうした不思議なことが起こりますね」
「はい、ではこのことをです」
瞑目からだ、教授は学者として村の者達に言った。
「日本で学問として紹介しても宜しいでしょうか」
「はい、どうぞ」
「オコンネル爺さんも喜ぶと思います」
「爺さんが先生に紹介した話ですし」
「それなら」
「わかりました、ではそうさせてもらいます」
教授は村の者達に一礼して答えた、そしてだった。
彼は日本に帰って実際にこの話を論文にも書きアイルランドの事例として発表した。そして日本にも広めたのだった。
そしてだ、その後でだった。
彼は学生達にだ、こう言った。
「不思議な話があるね」
「あの国にはですね」
「そうしたことが本当にあるんですね」
「そのことがわかったよ」
こう言うのだった、彼の研究室の中で。
「あらためて」
「あの国はですね」
「そうした不思議なことが本当に起こる」
「そうした国なんですね」
「鳥が死を知らせる」
まさにというのだ。
「妖精の様なことが起こる、そうした意味でもね」
「あの国はですね」
「妖精の国なんですね」
「そうなんですね」
「うん、僕もあらためてわかったと」
しみじみとして言う教授だった、そしてだった。
ナイチンゲールについてもだ、学生達に言った。
「これからあの鳥を見る度にこの話を思い出すだろうね」
「サヨナキドリでしたね」
「日本語では」
「そうだよ」
名前についてもだ、教授は答えた。
「そう呼ぶんだ」
「日本にもいますし」
「その鳥を見れば」
「それで、ですね」
「この話を思い出すことになりますね」
「うん、漢字で書くと小夜啼鳥」
実際にだ、教授は紙を出してそこに書いた。
「確かにこうした話にね」
「合ってますね」
「まさにそうした鳥ですね」
「そうしたことだね」
漢字で書いてあらためて言うのだった、このこともまた。
ナイチンゲール 完
2015・12・21
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ