4部分:第四章
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第四章
「このフィッシュアンドチップスだけだぞ、冗談抜きで」
「あとは朝食だけか」
「トーストに卵料理に紅茶」
果たしてそれをイギリス料理と言っていいかどうか皆内心疑問ではあった。
「そんなもんか?」
「やっぱりよ、幾らコックでもな」
「なあ」
ここでまた皆怪訝な顔になってひそひそと囁き合うのだった。
「無理だよなあ、そんなところの料理なんてな」
「美味くならねえって」
「だよな」
やはりそう思わざるを得なかったのだった。イギリスの料理のことを考えると。しかしそれでも友一は真面目にそのイギリス料理を作り続けていた。
そうして次に出て来たのは。ロースとビーフとヨークシャープティングだった。見ればヨークシャープティングにはソーセージを小さく切ったものも入れられていた。
「はい、今度はこれね」
「ああ、これだよな、やっぱり」
「イギリス料理っていったらな」
皆そのローストビーフを見て言う。それと一緒に鰻もパイも出て来た。
「あれっ、イギリスって鰻食べるのか?」
「鱈ばかりじゃなかったのか」
「素材にちゃんと鰻出してたよ」
少し驚く皆に多少憮然とした顔を作って答える友一だった。
「鰻も。見てなかった?」
「ああ、そういえばそうだった?」
「鰻もちゃんと」
「そうだったっけ」
「そうだよ。イギリス人は鰻も食べるよ」
あらためてこのことを皆に話すのだった。
「ちゃんとね」
「そうだったんだ」
「それで鰻のパイが」
「まあ鰻のパイはどの国でも食べられるけれどね」
欧州では鰻の食べ方の中でも最もメジャーなものの一つである。欧州には当然ながら蒲焼といったものがないのでこうした調理法になるのである。
「それでもね。イギリスでも食べられるからね」
「それでこれか」
「そうだよ。どう?」
「ああ、これもまた」
「美味しいよね」
「ねえ」
鰻パイの評判もまた上々だった。皆微笑んでそれを食べてそうして友一に答えている。
「鰻パイ、これも」
「いけるわよ」
「これって船乗りの人達が主に食べるんだけれどね」
「ああ、じゃああれだな」
それを聞いたイギリス帰りの彼がここでまた言ってきた。
「これは貴族達の間じゃ食べないよな」
「そうだよ、実は全部の料理がね」
「だよな。向こうの貴族はイギリス料理は食べない」
そしてここで奇妙なことも言う彼だった。日本人から聞けばだ。
「フランス料理だからな」
「そうなんだよね、実は」
友一も彼のその言葉に応えて微妙な顔になって頷くのだった。
「残念なことにね」
「そうだよな、本当にな」
「イギリス人なのにイギリス料理食べないって?」
「何、それ」
「おかしくない?」
そしてやはり日本人の彼等はそれを聞いていぶかしむ
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