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カロチャの刺繍
第六章

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「こうした刺繍を輸出する様になって」
「今もですね」
「こうしてお土産にですか」
「売られていたりするんですね」
「そうなんです」
 実際にというのだ。
「この通り」
「そうなんですね」
「実際にですね」
「こうしてですね」
「売られているんですね」
「そうです、ではお買いになりたいのでしたら」
 そのものずばりという調子でだ、イシュトヴァーンは観光客達に告げた。
「どうぞ」
「はい、わかりました」
「それじゃあです」
「買わせてもらいます」 
 観光客達も乗ってだ、その刺繍を買った。
 日本から来た観光客達はこれでもかとだ、刺繍だけでなく他の土産ものも買った。ビジネスは大成功だった。
 それでこのツアーが終わった時にだ、イシュトヴァーンは打ち上げの時にレカにワインで乾杯をしてからこう言った。
「いや、本当にね」
「今回もですね」
「成功したね」
「そうですね」
 まさにとだ、レカも笑って言う。
「日本人は気前よくお金を出してくれますが」
「今回もね」
「上手くいきましたね」
「お店の人達も喜んでくれてるよ」
「どうでした、私のモデルは」
 服を着たそれはというのだ。
「中々だったでしょう」
「よかったよ、今回もね」
「それは何よりです」
 レカは笑顔でワインを飲みつつだ、こうも言った。
「童顔で小柄ですから」
「だから余計っていうんだね」
「あの服が似合うんですね」
「うん、可愛い服はね」
「似合いますね」
 自分からだ、レカは言った。
「そしてそれが余計にですね」
「仕事の成功につながってるね」
「そうですよね」
「じゃあ次もね」
「はい、次のお仕事も」
「頑張って成功させよう」
 イシュトヴァーンは笑ってだ、レカに応えた。
「そして会社も大儲けだ」
「そういうことですね」
「もう資本主義だからね」
「頑張って働いてお金を儲ける」
「そうしていこう」
「ハンガリーはキューブだけじゃないですから」
 レカも言うのだった。
「刺繍もあります」
「そうそう、ワインもね」
「どんどん頑張って刺繍買ってもらいましょう」
「次のお客さん達にもね」
 笑って言うイシュトヴァーンだった、そうした話をしてだった。
 二人は仕事の成功を祝った、そのうえで次の仕事に想いを馳せるのだった。次の仕事も成功させようと。


カロチャの刺繍   完


                         2016・3・30
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