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第一章
美味しいの!?
まずい、誰もがこう言う。
「とにかくさ、イギリスの料理ってさ」
「そうそう」
「あんなまずいものないよ」
皆最早顰めさせるのを通り越して苦笑いになっている。その顔で語るのだった。
「何であんなにまずいのかね」
「わからないわよね、本当に」
「食べられたものじゃないよ」
皆口々に話していくのだった。その苦笑いの顔で。
「まずいとかそういうのじゃないよね、あそこまでくると」
「何もかもがまずいし」
「確かイギリスってあれよね」
常にイギリスという国自体の話にもなるのだった。イギリスの食べ物の話をすればイギリスのことの話にもなる、それも当然のことだった。
「世界を股にかけた大帝国だったのよね」
「そうだよ、もうね」
「七つの海を支配したっていう」
その大英帝国だ。あまりにも有名な国家だ。第二次世界大戦が終わるまでイギリスは確かに世界に覇を唱えた大帝国であったのだ。今は昔の話であるが。
「だったら何であんなに食べ物が酷いんだ?」
「世界から取り寄せたのに?」
「それであれ?」
皆いぶかしみながら言い合うのだった。
「あんなにまずいのかね」
「フランス料理は美味かったぜ」
一人がここでこう言った。
「レストランのな」
「だからそれイギリス料理じゃないじゃない」
「フランスじゃない、イギリスの宿敵の」
だからこれは否定された。とにかくイギリスの食べ物ではない。このことがまた話される。とにかくイギリスの食べ物に対する評判は日本でも散々だった。
「味覚ないのかな」
「さあ」
遂にはこんなことまで言われる。
「あるだろ、そりゃ」
「やっぱりあるの?」
「ない人間なんかいないよ」
これはその通りだ。そこまで異常なことは流石にない。そのイギリスであってもだ。
「確かエリザベス一世はドリア百個とイングランドを交換してもいいって言ってたけれど」
「あんなのと!?」
「っていうかあんな臭いがきついのいいわよ」
皆ドリアになると顔を顰めさせてしまった。
「そんなのと交換してでもって昔からまずいの?」
「どれだけ料理が酷かったんだろう」
こんなふうにまで言われる始末だった。
「イギリスの料理って。何なのかな」
「本当にまずいなんてものじゃないんだ」
「だから実際にまずいんだって」
そのまずさがあらためて確認されたのだった。
「もうさ。あんまりにも」
「イギリスはダイエッターに優しい国だよ」
ブラックユーモアを愛するイギリス人も驚くとんでもないユーモアの言葉だった。しかしこれは日本人にとってはとんでもない味ということだ。
「本当にね」
「ダイエッターに優しいのは事実ね」
「食べ物がまずい
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