巻ノ三十五 越後へその四
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「もう一つ厄介なことがある」
「ですな、あの方はお子がおられませぬ」
「そのことが問題ですな、あの方は」
「後継に秀次殿がおられますが」
「それでも」
「そこが問題となろう」
こう指摘するのだった。
「果たしてこれからどうなるかじゃ」
「秀吉公の支え」
「そして後継のこと」
「その二つがですか」
「羽柴家の泣きどころですか」
「だから天下はこれから数年で一つになるであろうし」
秀吉による天下統一、それは成るというのだ。
しかしそこから先もだ、昌幸は言うのだ。
「それから数年は天下は泰平であろう」
「秀吉公がおられる」
「その間は」
「しかしお二人がおられなくなっており」
秀長、利休がだ。
「そして秀吉公もおられなくなれば」
「その時はですか」
「天下はどうなるかわからぬ」
「折角統一されても」
「そこからはですか」
「一度一つになってもまた分かれるものじゃ」
こうしたことも言ったのだった。
「晋を見るのじゃ」
「晋、異朝のことですか」
「明のかなり前の王朝でしたな」
「そうじゃ、司馬氏のな」
三国時代の後の王朝である、三国に分かれた中華を再び一つにした。そうした意味では多大な功績があった。
しかしだ、折角統一された国がというのだ。
「あの国はすぐに分かれたな」
「はい、確かに」
「ようやく統一が成ったと思えば」
「政をしくじればな」
まさにそれで、というのだ。
「国は分かれてしまう」
「晋の様に」
「統一しても」
「そうじゃ、そうなる」
まさにというのだ。
「だからじゃ」
「それで、ですな」
「若し秀吉公が失政をされたり」
「秀次殿に何かあれば」
「その時は」
「危うくなる」
この天下がというのだ。
「そして次の天下人を争う戦が起こるやもな」
「ですか、では」
「若しよからぬことがあれば」
「その天下人は」
「やはり羽柴家が第一であるが」
秀吉の次の天下人はというのだ。
「あの家から出るであろう、しかし」
「それでもですか」
「他の家である場合もある」
「左様ですか」
「その場合徳川家がな」
家康、まさに彼がというのだ。
「有力じゃ」
「徳川家ですか」
「家康殿がですか」
「徳川家は二百五十万石じゃ」
まずは石高即ち力からだ、昌幸は述べた。
「羽柴家に次ぐものじゃな」
「はい、確かに羽柴家に降られましたが」
「しかし敗れた訳ではありませぬ」
「だから秀吉公も石高を減らしてはおられませぬ」
「それが大きいですな」
「そうじゃ」
家康は秀吉に戦で敗れていない、それによって石高を減らされず降ることが出来た。それが非常に大きいというのだ。
このことを話してからだ、昌幸はさらに話した。
「そ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ