三十五話:予言
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ぎる行動をどこかしらで止められかねないからだ。
「機動六課の視察はまだなのか?」
「すでに準備は整っていますので今週中には」
「そうか。……あの小娘の部隊か。あれは元犯罪者の割に目が澄んでおって気に食わん」
「発言にはお気を付けください。公式で聞かれれば問題になります」
「ふん」
秘書のオーリスから注意を受けたレジアスであるが鼻を鳴らすだけである。以前にはやてと会った時は危うく戦闘が始まりかねないほど険悪な空気になった。レジアスは元犯罪者が局員になるのを快く思っていない。一度腐ったものはもう戻らないという考えもあるが部下や同僚を傷つけた者達と肩を並べたくないからというのが一番の理由だ。
しかしながら、八神はやてにはそれとはまた違った嫌悪感を抱いていた。堂々と自分に言い返してきた態度はともかくとして、彼女の目は犯罪者にしては綺麗すぎた。更生に燃える熱意でもなく、罪悪感から来る後ろめたさでもなく、彼女の目は希望に満ちていた。無知ゆえの希望ではなく現実を知った上でそれを求める強さを持った瞳であった。
その瞳にかつて自分が殺してしまった親友を思い出してしまい、同時にはやて如きがあの親友と並べるはずもないという思いがあり毛嫌いしているのだ。それともう一つ、彼女の雰囲気が大嫌いな男に似ているからである。
「あの男の娘か……」
「何かおっしゃいましたか?」
「いや、何でもない。それよりもアインヘリアルの完成を急ぐように伝えろ。だが、手は抜くな。あれは地上の為に命を落とした全ての勇者達の魂。地上の未来の守り手だ」
「かしこまりました」
それだけ伝えるとレジアスは立ち上がり窓からミッドチルダの街を一望する。この街を守るために生涯の全てを賭けてきた。いかなる犠牲を払ってでも守り通したいと願うこの街を―――人間の数でしかとらえない男が気に入らなかった。
男の経歴などどうでも良かった。結果的に世界を平和にしているなどという情報も怒りを抑えるにはまるで足りなかった。地上を守ってきた誇りを踏みにじられた。自分の大切なものをどこにでもあるものとして軽視するでもなくどこまでも平等に扱われたことが気に入らなかった。
この街を守るために流れてきた幾多の血を他のより数の多い場所に使うべきだったと断じた男が許せなかった。何年も前に初めて会った時の人を見ていない瞳が己と男の違いを感じさせ殺意すら抱いた。
「愛する者がいる地上を守る。それすらできずに何を守れるというのだ」
かつて友と共に抱いた信念は変わったかもしれない。簡単に冷酷な判断も下せるようになった。だが、レジアスが守りたいと思ったものは昔から何一つ変わってはいなかった。
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