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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十八話 襲撃(その2)
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帝位を我が物にしようと密かに謀略をめぐらしたと」
「そ、それは」
「どうすれば良い?」
侯爵も貴族たちも困惑している。あげくの果てに少将に救いを求めた。リューネブルク少将は笑いを噛殺している。この子の駆け引きのうまさには驚くわ。いつの間にか侯爵さえ手玉に取ってる。
「そうですね。小官はリッテンハイム侯に敵意は持っておりません。今回の件も帝都の安寧を守るためやむなくした事です。侯がこの件で必要以上に不利益をこうむる事は無いと思います」
「そう思ってくれるか」
「調書を取りましょう」
「調書?」
「オッペンハイマー伯が自分の利のために陰謀をたくらんだ事を調書にまとめます。リッテンハイム侯もそちらの方々も調書の作成に協力してください。その調書には小官も意見を述べます。その際、リッテンハイム侯に多少軽率な言動があったが、反逆の意思は無しと」
「…」
「帝都防衛司令官代理が記述するのです。万一この件で査問が入ろうとも小官をはじめここにいる人間が生き証人になります。いかがです」
なるほど私たちは生き証人か、それなら殺せない。
「判った」
オッペンハイマー伯は売られた。いやリッテンハイム侯たちは自分たちがオッペンハイマー伯を売ったという意識さえ無いだろう。今なら判る、少将は最初からオッペンハイマー伯だけを処断するつもりだったんだ。
「では、防衛司令部までご同行願います。もちろん戒めは解きますよ。それから勝手な行動は慎んでください。さもないと」
「ああ、判っている。死体袋だろう」
「よくわかりますね。でも今度は生きたままです」
投げやりに言うリッテンハイム侯を絶句させると少将はにっこりと微笑んだ。少将、あんたは間違いなく悪魔よ、リッテンハイム侯がかわいそうに思えてきたわ。
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